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社説・コラム

社説 憲法解釈の最終案 曲解やめて白紙に戻せ

 集団的自衛権が行使できるよう、政府は憲法解釈を変更する閣議決定の最終案を、きのうの与党協議に示した。

 行使容認に前のめりな自民党はまだしも、「平和の党」公明党がこのまま閣議決定を認めるのだろうか。まだ間に合う。踏みとどまり、自民との最終合意は見送ってもらいたい。

 憲法第9条は武力の行使を「国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」と定めている。集団的自衛権に基づく武力の行使を、たとえ最小限であれ認める閣議決定は、まっとうな解釈には程遠い。

 国是としてきた「専守防衛」や、憲法3原則の一つ「平和主義」を逸脱する危険性が拭えないからだ。わずか1カ月余りの密室協議で、戦後日本が歩んできた道を百八十度ひっくり返していいものだろうか。

 最終案のポイントは、武力行使できる3要件を新たに定め、全て満たされれば「必要最小限度の実力行使は許容される」とした点だ。日本が直接攻撃されなくても「密接な関係にある他国」が攻撃されたケースも含めることで、集団的自衛権が行使できることになる。

 最終案には「平和国家の歩みをより確固たるものにしなければならない」などの文言もある。空々しさは否めない。

 ところが公明党の山口那津男代表はおとといのNHK番組で「二重、三重の歯止めが利き、拡大解釈の恐れはないと思っている」と語った。

 確かに協議の過程で公明側は、わが国の存立が脅かされる「恐れ」とあったのを「明白な危険」に修正させるなどした。とはいえ「明白な危険」という概念もあいまいで、時の政権がいくらでも拡大解釈できる余地は残るだろう。

 さらにきのうになって重大な懸念が持ち上がった。国連の集団的安全保障の下での武力行使について、政府が「3要件を満たすなら憲法上許される」との想定問答集をまとめたという。

 国連決議に基づき多国籍軍が出動した紛争地の近くで、自衛隊の掃海艦隊が活動するといった事態を想定しているようだ。機雷の掃海は武力行使と見なされ、公明が反発したため、閣議決定の最終案に具体的な言及はない。

 それを政府は、国会などで質問されたら「憲法違反ではない」と答弁しようというのだ。憲法解釈を力ずくで変更する閣議決定を、さらに拡大解釈するような話である。与党協議が意味をなさなくなってしまう。

 それとも与党間で納得済みなのだろうか。そうした臆測を広げるのも、密室協議という手法のまずさといえよう。

 これまでの協議を振り返ると終始、自民ペースで進んだように映る。公明がブレーキ役を果たせなかったのは、「連立与党からは離脱しない」と見くびられていたためではないか。

 これまで公明が訴えてきた「加憲」とは、無理を通した解釈を憲法に加えることではなかったはずである。きょう地方組織の声も聞くようだが、「連立ありき」で党内意見を集約すれば、禍根を残しかねない。

 そもそも国民的議論は全く尽くされていない。来月早々の閣議決定とは、あまりに拙速だ。政府・与党は最終案にこだわらず、一から出直すべきだ。

(2014年6月28日朝刊掲載)

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