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川に宿るヒロシマの思い 被爆70年に向け取り組み

 被爆70年を来年に控え、広島の街を幾多に分かれて流れる川を通じて「ヒロシマ」に思いをはせるコンサートやイベントが、7月上旬から中旬にかけて広島市内で相次いで催される。

詩・ビナード×曲・中村×歌・錦織 6日広島

「ひろしまへ」初演 記憶紡ぐ

 7月6日には西区民文化センターのリサイタルで、米国出身の詩人アーサー・ビナード(46)=広島市中区=が書き下ろした詩に、西区出身の作曲家中村暢之(59)が曲を付けた歌「ひろしまへ」が初演される。出雲市出身のテノール歌手錦織健(54)が歌い上げる。

 原爆犠牲者の遺品が語り掛けてくる写真絵本「さがしています」を執筆するなど「広島は表現活動の土台」と話すビナード。原爆ドーム近くの雁木(がんぎ)に腰掛け、広島の川や空を題材に言葉を紡いだ。

 「多くの涙を運び、忘れたいことを忘れさせてくれる一方で、さまざま記憶や記録を蓄えてきた」と川や空の存在の大きさを語るビナード。原爆を直接表現はしないが「ピカと川は深いところでつながっている。見つめていると自然にピカのことが浮かんでくる」と込めた思いを解説する。

 錦織にとっても、広島は関わり深い地。高校時代に声楽を学びに通い、プロになってからは広島交響楽団の「平和の夕べ」コンサートなどに出演。「原爆というつらい出来事を乗り越えたからこそ、いろいろなことを受け入れる懐の広さがある」と街の印象を語る。

 被爆2世の中村とはかつてレコーディングで組んだ仲。自身のために仕上げられた曲を聴き、「優しさに満ちた作品。聴く人が自然に何かを感じ取ってくれるはず」と期待する。

 広島ゆかりの表現者に「ヒロシマ」をテーマにした曲作りを委ねる「ヒロシマ音楽プロジェクト70」の一環で西区民文化センターが企画。「ひろしまへ」は錦織のリサイタルで披露する。午後2時開演。ソプラノ歌手佐々川広子とピアノ河原忠之と共演し、オペラやミュージカルの曲も歌う。4千円(前売り3500円)、高校生以下と65歳以上は3千円(同2500円)。同センターTel082(234)1960。(余村泰樹)

川に宿るヒロシマの思い 森利太監督作品「太田川放水路」上映会 13日に広島 昭和の大工事 復興アピール

森利太監督作品「太田川放水路」上映会 13日に広島

 
昭和の大工事 復興アピール

 2年前死去した広島市の記録映画監督森利太氏の手による映画「太田川放水路」を上映する集いが、7月13日午後2時から同市中区基町の映像文化ライブラリーで開かれる。「太田川が語り継ぐヒロシマ」がテーマ。作曲家伴谷晃二さんらが企画した。

 福山市出身の森氏は海軍航空隊を経て戦後、岩波映画製作所で岩波写真文庫に携わる。その後、日本の報道写真の草分け、名取洋之助らが創設した作家集団(第3次日本工房)で活動。1968年に広島で企画会社を起こし、四十数年間で撮った映画は400本を超す。中でも62年と65年の「太田川放水路」2部作は昭和の大工事を通じて広島の復興を世に知らしめた。

 当日は上映後、伴谷さんの作品「交響詩、広島・太田川によせる三章」などを室内楽で演奏。太田川の環境や景観をテーマに、内藤順一・NPO法人西中国山地自然史研究会副理事長、今川朱美・広島工業大准教授、編集者正本真理子さんによるフォーラムも開く。佐田尾信作・中国新聞社論説副主幹がコーディネーターを務める。  入場無料。主催はヒロシマ・ミュージック・プロジェクト。事務局は伴谷さん方Tel0829(38)2264=ファクス兼用。

(2014年6月28日朝刊掲載)

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