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医療特別手当 打ち切り増 原爆症認定 本年度 国が審査厳格化

 国から原爆症に認定された被爆者にこれまで支給されてきた医療特別手当(月約13万5千円)が、打ち切られるケースが本年度増えている。3年ごとの更新審査に当たる各自治体に対し、厚生労働省が支給条件の「要医療性」を厳格に判断し、治っていれば特別手当(月約5万円)へ変更するよう通知したため。広島県は更新対象者の3割に当たる129人を変更。広島市も3割の434人の決定を見合わせ慎重審査をしている。(田中美千子、藤村潤平)

 被爆者援護法に基づき支給される医療特別手当は、医師の診断書を基に都道府県や広島、長崎両市が3年ごとに継続の可否を決める。特別手当へ減額するケースは従来少なく、昨年度は広島県で更新対象182人のうち5人、広島市で685人のうち7人だった。

 しかし、広島県は本年度285人の継続申請を認めた一方、129人を却下した。被爆者支援課は「医師たち7人で審査。国の基準通り適正に判断している」とする。却下されたうち6人は行政不服審査法に基づき、国に不服を申し立てた。

 広島市は1437人のうち979人に医療特別手当の支給継続を決め、治癒を申告した24人は特別手当に変更した。残り434人については判断を保留し、医療機関へ個別に病状を照会。6月20日の手当支給は見送り、該当者に文書で知らせた。

 西区の男性(86)もその一人だ。市営住宅で妻(76)と暮らすが、海外生活が長かったため年金は月約8万円。放射線白内障で原爆症に認定されている。「手当が8万円以上も減れば生活に困る」と不安がる。

 各自治体が従ったのが、ことし3月の厚労省の通知だ。「医療を要する状況をより客観的に確認」するよう求めている。厚労省は理由について、法律家や医師たちの「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」が昨年末にまとめた報告書で「更新のたび漫然と要医療性があると認めてきた事例を指摘され、明確化を求められた」と説明する。

 一方、被爆者団体からは、原爆症の認定基準の度重なる緩和で認定者が増え、医療特別手当の支給総額が膨らんだ点が「減額」に向けた背景にある、との指摘の声も上がっている。

 長崎県は161人のうち44人を特別手当に変更。一方、長崎市は636人のうち変更は治癒を申告した7人、継続審査も11人にとどまる。

 広島市原爆被害対策部は「診断書に経過観察中と書かれていても投薬など治療を受けている場合がある。かかりつけ医に聞き、適正に判断する」としている。

(2014年7月1日朝刊掲載)

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