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社説・コラム

天風録 「こわい憲法のはなし」

 「どこまでが平和で/どこからがせんそうなんだろう」。沖縄慰霊の日に小3児童が読んだ詩にそんな一節があった。遠い空の下の戦火に心を痛めて考える。お兄ちゃんと仲良くするように、国と国のけんかもなくせないかな▲幼い問い掛けが鋭い。大人たちの胸に、似た疑問がよぎる日も近いだろうか。これはもう平和じゃない、戦争なのではと。自衛隊発足から60年を迎えたきのう、政府は憲法を読みかえ、集団的自衛権行使へ道を開いた▲悲惨な歴史を猛省し、この国は最高法規で戦力と戦争の放棄を決めたはずだ。戦後の教科書「あたらしい憲法のはなし」が子どもたちに語りかけている。他国との争いごとは「おだやかにそうだん」して解決しようと▲その解釈変更により「戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」。記者会見した首相の言葉に合点のいく大人がどれだけいることか。「こわい憲法のはなし」と題した教科書を国から受け取ったような気がする▲時代も情勢も変わったと、もっともらしい講釈は案外やさしい。だからこそ憲法の理念をとらえてうたう小3の詩が、まぶしい。「きっと/せかいは手をつなぎ合える/青い空の下で話し合える」

(2014年7月2日朝刊掲載)

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