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社説・コラム

社説 集団的自衛権と野党 今こそ対立軸の構築を

 集団的自衛権の行使容認は、日本の将来を左右する重要局面にほかなるまい。その中で野党は何をしているのか。自信満々の安倍晋三首相を見るにつけ、首をひねりたくなる。

 自民党と公明党の議論の拙速さがこれほど露呈したのに、野党側は待ったをかけるどころか存在感すら示せなかった。民主党など5党の党首らは閣議決定に合わせた都内の街頭演説で首相を批判したものの、形ばかりの印象も拭えない。

 政府の動きは速い。きのうは自衛隊の任務拡大などの立法化を担当するチームを内閣官房の国家安全保障局に置いた。だが法案というボールが国会に投げられるのを野党がじっと待つようでは困る。次の展開を迎える前にやるべきこと、考えるべきことはいくらでもあろう。

 共同通信社の緊急世論調査によれば、行使容認への反対が54%と半数を超え、内閣支持率は5割を切った。憲法解釈の一方的な変更により海外の戦争への参加も可能とする―。強引な閣議決定の危うさへの率直な疑問と不安が現れたといえよう。

 この民意をどう政治に反映させるのか。野党の責任は重い。衆参予算委員会の閉会中審議が近く予定される。戦略を練り直し、閣議決定のプロセスを含め問題点を厳しくただす姿勢が求められるところだ。

 だが集団的自衛権の行使そのものについて賛否が分かれ、足並みがそろわないのも現実だ。明確に反対するのは共産党、生活の党、社民党にとどまる。慎重姿勢もあれば、拙速な閣議決定にこそ異を唱えるものの行使には賛成する勢力もある。

 加えて昨夏の参院選がもたらした「自民1強時代」における野党の覇気のなさも目立つ。こうした状況こそが、首相の強気を支えているのだろう。もはや政党政治は機能不全に近い。時代の転換点を迎えた今、このままでいいはずはない。

 安倍政権の行き過ぎにどう歯止めをかけるのか。自民党の高村正彦副総裁は国会審議をにらんで「これからが勝負」と言う。ならば何より野党第1党の民主党のスタンスが問われる。

 党内には行使に賛否両論があり、海江田万里代表自身は反対色を出すが、党の見解はあいまいなままだ。公然と代表交代論が出るなど内輪もめが絶えない党内事情のため、分裂回避を優先してきたふしもある。

 確かに民主党にとって安全保障と外交は鬼門といえる。政権を担った時代には普天間問題や尖閣問題などの対応のまずさが批判を浴び、下野の一因ともなった。だが逃げているようでは国会対応はおぼつかない。まず党内議論を急ぐべきだ。

 政界再編にも影響を与えよう。みんなの党に続く日本維新の会の分裂を受け、臨時国会までに複数の新党が想定されている。単なる数合わせなら許されまい。集団的自衛権の問題とどう向き合う党なのか、国民にしっかり示してもらいたい。

 今後の選挙で大きな争点になるのは間違いない。世論調査ではここまで安全保障政策を転換するなら政権が信を問え、という声が68%を占めた。少なくとも来年は統一地方選がある。

 有権者が自らの思いを1票に託す選択肢が十分でなければ話にならない。野党側による対立軸の構築が急がれる。

(2014年7月3日朝刊掲載)

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