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広島復興 50年代の息遣い 広島の泉美術館で明田さん写真展 16日から 

街・市民の表情追う80点

 被爆地広島の復興を撮り続けてきた写真家明田弘司(あけだ・こうし)さん(91)=広島市中区=の写真展が16日から、西区の泉美術館で開かれる。つち音響く平和大通りをくまなく捉えるなど貴重なカットがそろう。市内のNPO法人がネガなど約5万5千点を整理し、選び出した。にぎわいの戻った祭りや路地の風景を含め、1950年代の広島市街と暮らしの息遣いを伝える約80点を展示する。(林淳一郎)

 水着姿の子どもたちが原爆ドーム(中区)前の相生橋を進む。被爆11年後の56年夏の一こま。爆心地そばの川にも歓声が響いた。建設中の平和大通りでは、もっこを担ぐ女性。他のカットには、まだ木々のない緑地帯で遊ぶ少年の姿も。後ろの「atom」の英字看板は同年、原爆資料館が会場になった原子力平和利用博覧会のものだ。

 「子どもの笑顔も復興の大きな支えになった」と言う明田さんは呉市出身。戦中は軍属として中国で航空写真の現像をした。復員後の48年、広島市内に写真店を開き、仲間とヒロシマ・フォト・クラブを結成。報道写真家の名取洋之助氏に「今を記録し続けて」と助言され、街や市民の表情、活気をファインダー越しに追ってきた。

 写真展のタイトルは「広島の記憶 写真家明田弘司の仕事から」。行商でリヤカーを引く女性、とうかさんの縁日で華やぐ新天地広場、建設中の基町高層アパート群の写真も並べる。広島県写真連盟会長などを務めてきた明田さんだが、個展はほとんど開いてこなかった。

 NPO法人、広島写真保存活用の会(松浦康高代表)が2012年末から、広島市を中心に尾道や福山、山陰で撮られた写真を整理。約3万8千点に絞り、古地図や文献で撮影場所・時期を確認した。電子データ化して今春、中区の広島市公文書館に寄託。被爆70年の来年、同館ホームページで公開予定だ。

 「どの写真もカメラ越しに会話をしているようで温かい」と同会の梅森美帆さん(34)。明田さんは「写真はその瞬間を捉えた掛け替えのない記録。家族で思い出話の花を咲かせてもらえれば」と話している。

 同展は泉美術館と中国新聞社の主催。9月7日まで。無料。月曜休館(祝日は開館)。

(2014年7月6日朝刊掲載)

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