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地域超えた協力訴え さいたま 国連軍縮会議閉幕

■記者 岡田浩平

 「核兵器のない世界 構想から行動へ着実な前進」をテーマに、さいたま市浦和区のホテルで開かれた国連軍縮会議(国連軍縮部など主催)は最終日の27日、議論を総括して3日間の日程を終えた。

 取り上げた四つの議題ごとに参加者代表が討議内容を報告。5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議について一橋大の秋山信将准教授が、再検討会議の最終文書に盛り込まれた行動計画の実施に向け「全締約国が地域、政治的な違いを超えて協力することで初めて核兵器のない世界が現実になる」と指摘した。

 国連アジア太平洋平和軍縮センターのローマン・ハンガー特別コーディネーターは、軍縮・不拡散教育が世界的に立ち遅れている課題に言及。政府や非政府組織(NGO)、市民社会一体の取り組み強化を求めた。

 締めくくりの意見交換でピースボートの川崎哲共同代表や広島平和文化センターの国本善平常務理事は、来年の会議で核兵器禁止条約を議題に取り上げるよう注文した。


<解説>核廃絶 まず行動を


■記者 岡田浩平

 さいたま市での国連軍縮会議は、5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を受け、「核兵器のない世界」実現への着実な道程を探る議論が中心となった。むろん一気に前進する「次の一手」はなく、国家間の根深い対立が解消したわけではない。乗り越えるべき壁は高い。

 「勝利報告会のようだ」との声が初日の全体会議で上がった。5年に1度のNPT再検討会議が曲折の末とはいえ最終文書を採択したことから、核軍縮や不拡散へ前向きな討議ができる環境は整っていた。

 その主役は、再検討会議で議長を務めたフィリピンのリブラン・カバクトゥラン国連常駐代表だった。最終文書を採択するまでの苦労話を紹介し、そこに盛り込まれた64項目の行動計画の着実な前進を繰り返し訴えた。

 ただ包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効や核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉開始など、積年の課題の即時解決策は見つからない。最終文書に明記された核兵器の非人道性や核兵器禁止条約をめぐる議論も深まらなかった。

 最も深刻なのは北東アジアや中東の核問題だ。最終日の全体会議でも、イスラエルを擁護する米国と、非難するイランの政府関係者が互いの主張をぶつけ合った。

 「私は勝利宣言はしない。やらなければならないことがある」とスイスのユーグ・ラウバー軍縮大使。元国連事務次長の阿部信泰軍縮・不拡散センター所長も「行動計画の行方は、NPT締約国のやる気に委ねられている」と指摘する。核兵器廃絶への道を後退させないためには、国家や市民が一刻も早く「行動」を起こすしかない。

(2010年8月28日朝刊掲載)

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