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秋葉市長 渡航ラッシュ 広島から平和訴え 出張1ヵ月で18日

■記者 藤村潤平、野田華奈子

 9月1日までフィリピン出張中の広島市の秋葉忠利市長は、帰国から2日後、今度はロシアへと旅立つ。夏休み明けの8月20日以降の1カ月で海外出張は3度に上り、計18日間海外に滞在する。核兵器廃絶を掲げ、世界を飛び回る市長。グローバルな行動力への評価の一方で、課題山積の「本丸」を長期間空けることへの批判も、市議会に浮上する。

 秋葉市長は現在、「アジアのノーベル賞」といわれるマグサイサイ賞の授賞式出席などのため、フィリピンに滞在中だ。25日に出発し、9月1日に帰国を予定する。

 帰国翌日の2日には市役所で公務をこなし、息つく暇なく3日から8日間の日程でロシアへ出発する。

 ロシアでは、姉妹都市ボルゴグラードや周辺都市を訪問。自身が会長を務める平和市長会議への加盟、協力を要請する。核超大国ロシアへの訪問は実は、昨年も計画した。しかし急きょ、メキシコでの国連主催の軍縮関係会議などの出張が入り、中止した。

 今年4月以降、秋葉市長は米ニューヨークに11日間、中国浙江省寧波(ニンポー)市に2日間、それぞれ出張した。そして今回のフィリピン、ロシア、さらに10月にはアルゼンチン行きも予定する。ブエノスアイレスである国際平和フォーラムに参加。計画では隣国ブラジルも訪れ、出張期間は約10日間となる見込みだ。

 まだ実施していないロシアとアルゼンチンを含めると、約7カ月間で39日前後を海外や機中で過ごすことになる。米国、ロシア、アルゼンチンは市が税金で出張費用を支出。中国は市の外郭団体が、フィリピンは現地の財団が、それぞれ出張費用を負担した。

 財政健全化、都市内高速道の整備、220人に達する保育所の待機児童…。市民の暮らしに直結した課題が山積する中、秋葉市長の度重なる渡航には、市議会に賛否が交錯する。

 「財政難の中、しかも定例会を控えた大事な時期の相次ぐ渡航は理解に苦しむ。肝心の地元の公務が、おろそかになる」。政和クラブの山田春男幹事長は、こう批判する。

 一方、未来クラブの馬庭恭子市議は「核兵器廃絶の機運が世界的に高まる今こそ、精力的に動く時。国際経験豊かな市長の専門性を発揮すればいい。留守中の公務は、3人の副市長で対応できる」と理解を示す。

 来春、3期目の任期を終える秋葉市長。海外出張をめぐる議会側の賛否のスタンスは、現職への評価を色濃く投影し始めてもいる。


<秋葉市長の本年度の海外出張>

日程             出張先        主な目的            経費
4月29日          米国ニューヨーク  NPT再検討会議など出席  766万円(市予算)
  ~5月9日(11日間)

8月20、21日(2日間) 中国浙江省     観光、経済交流の促進    市外郭団体が負担。
                                               金額は年度末に確定

8月25日          フィリピン       マグサイサイ賞授賞式    主催財団が負担
  ~9月1日(8日間)              など出席

9月3~10日(8日間)  ロシア        平和市長会議への       83万円(市予算)
                            賛同・協力要請

10月18日前後の    アルゼンチンなど  国際平和フォーラム      814万円(市予算)
約10日間                      など出席
                                        ※経費は随行職員分など含む

秋葉忠利市長の海外出張をめぐる動き
 本年度当初予算には米国、韓国大邱市、ロシア、アルゼンチンの4件の渡航費計2300万円を計上。市議会は3月の定例会でいったん、ロシアとアルゼンチンの出張旅費などを削除した修正予算案を可決した。これに対し秋葉市長は再議権を行使し、臨時会では市の原案通りの予算案が可決され出張費がすべて復活した。航空機の座席は、米国の往路がファーストクラス、復路がビジネスクラスを利用。ロシアは往復ビジネス、アルゼンチンは未定。韓国大邱市へは代理が出席した。市はファーストクラス利用について「機内で集中して原稿や資料を作成するため」とする。

(2010年8月28日朝刊掲載)

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