×

社説・コラム

『記者縦横』 憲法解釈 教科書通りか

■東京支社・坂田茂

 「海外での武力行使を認めるなら、日本は平和憲法を持つ特別な国とする教科書の記述は間違いになる」。こんな指摘をしたのは、「法の番人」といわれる内閣法制局の元長官阪田雅裕さん。それを確かめようと早速、憲法を初めて習うという小学6年の社会科の教科書を買った。全出版社の5冊だ。

 うち3冊に、憲法の理念を紹介するくだりがあった。施行された当時の中学生の教科書にあった「あたらしい憲法のはなし」の一文である。

 「これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。(中略)しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」

 分かりやすく的を射た説明。繰り返して読むうちに、なんだか勇気づけられた。敗戦から立ち直ろうとする当時の中学生も、きっと同じ思いに駆られたのではないだろうか。

 一方で、心配になったのは今の6年生たち。条文はそのままなのに、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定。会見した安倍晋三首相は「憲法解釈の基本的な考え方は何ら変わらない」と強調した。

 6年生に、この言葉はどう伝わるのだろう。というより、理解できるのかと考え込んでしまった。教科書の記述はそのままに基本的な考え方は変わらないとは、とても言えないはずだ。

(2014年7月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ