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反対あっても議会の意思 改憲議論意見書 山口県議会可決 提出要件見直し背景

 山口県議会(定数49)による11日の「憲法改正の実現に向けた議論を求める意見書」の可決は、改憲に意欲を示す安倍晋三首相(山口4区)のお膝元から機運を高めようと最大会派の自民党(25人)が主導し、文言修正で公明党(5人)の協力を取り付けた。背景には少数会派への配慮から「県政に直接関係ない意見書の提出は全会一致」とする原則が昨年6月に見直されたことがあった。(村田拓也)

 「お互いが知恵を絞って意見書案を作るのが県議会の良き伝統だった。数の力を背景にした多数決には割り切れない思いだ」。民主・連合の会(5人)の加藤寿彦会長は反対討論で嘆いた。

 県議会は従来、「明らかに県政に直接関係のない意見書・決議は全会一致でなければ提出しない」と申し合わせていた。昨年3月、各会派でつくる議会改革検討協議会が、提出要件を「2会派以上かつ議員の4分の1以上の賛同」に変更するよう答申。同6月から導入された。

 答申は、反対意見もある中でまとまった。協議会会長の新藤精二氏(自民党)は「今までが少数会派に配慮しすぎだった。多数決という民主主義の原則で議会の意思を示すのは当然」と訴える。

 自民党の原案は「憲法改正の早期実現を求める意見書」。国政で連立を組む公明党との協議で、「早期実現」の題名を「実現に向けた議論」に変え、「東アジア情勢は一刻の猶予も許されない事態に直面している」の文言も削除した。

 公明党県議は「憲法9条の改正が透けて見える原案のままなら、賛同はできなかった」と振り返る。自民党の友田有会長は「可決は県民の意思。新たな時代にふさわしい憲法改正をめぐり、議論を深めたい」と語った。

 反対した共産党(2人)の藤本一規会長は「議席の過半数を握る自民党の思いが県議会の意思とされる事態が今後も繰り返されるのではないか」と危惧する。意見書は、安倍首相や衆参両院議長宛てに送られる。

 山口大の纐纈(こうけつ)厚副学長(政治学)は「少数意見を大切にするのも民主主義。県民の賛否が割れるテーマでは、数を頼みにしない慎重な姿勢が必要」と指摘する。

(2014年7月12日朝刊掲載)

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