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社説・コラム

社説 ガザ戦闘 市民の犠牲 看過できぬ

 国際社会としても、このまま手をこまぬいているわけにはいかない。

 パレスチナ自治区ガザとイスラエルが戦闘を始めた。ロケット弾に空爆で応酬し、罪のない子どもや市民の犠牲が増えるばかり。しかし、歩み寄りの気配はうかがえない。

 さらにエスカレートすれば、イスラエル軍がガザへと地上侵攻する事態ともなりかねない。双方はただちに攻撃をやめ、話し合いの道を模索すべきだ。国連を中心に国際社会は、停戦への仲介を急ぎたい。

 今回の武力衝突は、6月に10代のユダヤ人少年3人が殺害されて見つかるという悲惨な事件が発端だった。今月に入り、今度はパレスチナの少年が焼死体で見つかる。互いに相手を非難し、緊張が一気に高まった。

 ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスがロケット弾を放ち、イスラエル軍が空爆で報復する。ここ1週間近く、その繰り返しが続く。

 ガザ側の発表では、既に子どもや市民を含め120人を超す犠牲者が出た。人々がサッカーW杯をテレビ観戦していた喫茶店も爆撃に遭ったという。

 一方でハマスが、核兵器の製造・保有との関連が指摘されるイスラエルのディモナ原子力施設に向けてロケット弾を発射した、という報道もある。

 互いに常軌を逸していると言わざるを得ない。理性を取り戻してもらいたい。

 両者は2008~09年や12年にも衝突した。とりわけイスラエル軍が地上侵攻した08~09年の戦闘では、ガザの1300人以上が犠牲になり、うち400人は子どもだったとされる。

 今回も地上戦となれば、被害は計り知れなくなる。自重してほしい。さらに言えば、軍備で上回るイスラエル側こそ率先して停戦へ動くべきではないか。

 パレスチナ側にとっては、過去の衝突当時とは内政事情が一変している。ヨルダン川西岸地区とガザによる「統一パレスチナ」に向け、パレスチナ自治政府とハマスは先月、暫定統一政府を発足させたばかりだった。

 統一政府のスタンスが問われよう。とりわけ自治政府のアッバス議長はイスラエルとの和平交渉を主導してきたはずだ。ロケット弾攻撃を自制するようハマスを説得できないものか。

 シリア内戦が泥沼化し、イラクは国家が分裂するかもしれない。「アラブの春」から3年半の中東は、民主化による安定よりもむしろ、暴力が支配する不安定な状況を招いている。

 ガザと接するエジプトにしても、今回は調停役を期待できそうにない。シシ新大統領の下、ハマスと近いイスラム組織ムスリム同胞団への弾圧を強めているからだ。

 とはいえ、ガザでは負傷した市民を治療する薬品類も枯渇しているという。エジプト経由で支援物資が現地に届くよう、人道的配慮を尽くせないか。

 もちろんイスラエルの説得役と言えば、まずは米国だ。ただこのところ、中東への影響力は著しく低下している。

 とすれば、ここはやはり国連の出番であろう。潘基文(バンキムン)事務総長は「対立の代償を市民が払っている」と強い危機感を示している。国連が調停に乗り出し、一刻も早く功を奏するよう、わが国も側面支援を強めたい。

(2014年7月13日朝刊掲載)

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