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委員8人中7人賛同 「平和主義」に被爆地の思い 8・6平和宣言で集団的自衛権に言及せず

 広島市長が読み上げることしの「平和宣言」で、焦点だった集団的自衛権の文言が入らないことが14日決まった。市側は「平和主義」の記述に被爆地の思いを表したとするが、行使容認に反対する市民の間には不満もくすぶる。

 市役所であった「被爆体験に関する懇談会」。市によると、示された2案に対し、座長の松井市長を除く有識者や被爆者の委員8人のうち、7人は「聞く人にとって分かりやすい」「基本的な考えを述べることで、平和宣言の立ち位置は理解してもらえる」と採用案を推した。集団的自衛権など個別問題に踏み込んだ表現を「聞く人の納得度が高い」として求めたのは1人だったという。

 松井市長が就任した2011年以後の平和宣言は、前半で公募した被爆体験を引用して広島の惨状を伝え、後半では平和をめぐる国内外の情勢や被爆者援護策を取り上げる構成を踏襲。昨年の懇談会では、限られた字数でことこまかに触れると「全体の迫力を欠く」との指摘が出ていた。松井市長にとって4年目の集大成となる今回は、自らの「哲学」の発信へ力点を置いたともとれる。

 ただ長崎市では、集団的自衛権の行使容認をめぐって、平和宣言文の起草委員会で被爆者や有識者から「具体的に踏み込んだ方がいい」などの意見が出たため、田上富久市長が「集団的自衛権」の文言を入れるかどうかを検討するという。松井市長は今月1日の閣議決定直後に「武力行使が際限なく拡大する懸念が拭えない」と批判したが、行使自体への個人の賛否は語っていない。

 市民団体「秘密法廃止!広島ネットワーク」は15日、松井市長の平和宣言に集団的自衛権反対の主張を盛り込むよう、署名を添えて市に要請する。共同代表を務める山田延広弁護士は「他国の戦争行為に加担すること自体が9条の理念から大きく外れる。松井市長は被爆地広島のリーダーとして、抗議の姿勢を明確にするべきだ」と話している。(加納亜弥)

(2014年7月15日朝刊掲載)

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