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複合施設計画 宙に浮く 島根原発寄付金で整備 核店舗 コンビニ誘致が白紙

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の地元自治組織が、3号機の建設に伴う中電からの寄付金約1億円を使って整備する複合施設の建設計画が、宙に浮いている。核店舗として誘致を見込んでいたコンビニ側との交渉が今月、採算面などから白紙に。着工のめどは立っておらず、自治会側は計画の練り直しを迫られている。(樋口浩二)

 施設は、原発から3~5キロの講武地区にある講武自治会(約300世帯)が、地区内の敷地約3千平方メートルに今月、木造平屋約400平方メートルを着工し、12月に開業する予定だった。3月、出店の覚書をコンビニの経営会社と結んでいた。

 だが今月4日の交渉で、自治会が覚書の撤回を要請。自治会によると、重要な収入源とみていたたばこ販売の見通しが立たないことに加え、他店の誘致を望む一部の住民が反対したためという。採算割れを懸念した同社も同意した。

 建設計画の検討は、予定地そばでJAくにびき(松江市)が運営する食料品店「マーケット鹿島」の閉店とセットで進んできた。自治会と計画を協議してきた同JAは6月27日、施設の開業をにらみ10月末での閉店を理事会で決議。しかし、交渉結果を受け、自治会側から閉店時期の延期を求められている。

 高齢化率が3割とお年寄りが多い同地区。70代無職女性は「どういう形であれ食料品と日用品が買える店は残してほしい」と望む。同JA企画管理部は「閉店延期も検討する」という。

 しかしマーケット鹿島は昨年度、売上高1400万円に対し710万円の赤字を計上。商圏が限られるため少なくとも最近10年は赤字といい、企業にとっての進出条件は厳しい。地区の60代農業男性は施設建設について「赤字になれば負担は住民に跳ね返る。他の使途を探ってほしい」という。

 一方、自治会は、事業費1億1700万円のうち約半分を土地の購入、造成に使った。桑谷充男会長(65)は「後戻りはできない。他の企業との交渉を早急に進められるよう努力する」としている。

講武自治会の複合施設建設計画
 島根原子力発電所3号機の送電線鉄塔の建設に伴う景観悪化などを受け、前身の講武自治協会が中国電力に地域振興名目での寄付を要請。2011年2月までに、約1億5千万円を受け取り計画を練ってきた。住民の交流スペースや農産物の産直市の整備も目指す。自治会は13年6月、事業化のため法人格を持つ組織として発足したが、松江市によると、地区住民の加入率は60・7%にとどまった。

(2014年7月15日朝刊掲載)

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