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米給油機 岩国に移転開始 普天間から全15機

 在日米軍再編に伴う、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から米海兵隊岩国基地(岩国市)へのKC130空中給油機部隊の移転が15日、始まった。日米両政府が1996年に普天間飛行場の返還に合意して以降、本土に沖縄の米軍部隊が移る初のケースとなる。

 米軍は移転後も、沖縄で空中給油機の訓練を続ける方針を示しており、実際に基地負担の軽減につながるかは不透明だ。一方で、岩国基地には2017年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機59機も移転する予定で、極東最大級の基地へと姿を変える。

 この日は2機が普天間飛行場を離陸し、午前と午後に1機ずつ岩国基地へ到着。燃料タンクを運んだ。8月末にかけて全15機が段階的に移転する見通しで、隊員や家族たち約870人も移る。当初は8日に始まる予定だったが、台風8号の影響で延期されていた。

 給油機移転は96年、沖縄の基地負担軽減を目的に設置された日米特別行動委員会(SACO)で合意。市は97年に容認した。その後、米軍再編計画に盛り込まれ、空母艦載機移転と関連付けられた。市と山口県は普天間移設に見通しが立たない中での移転は認められないとの姿勢を取りつつ昨年12月、「沖縄の負担軽減」を主な理由に当初よりも3機増えた給油機15機を今夏に移転させるとする政府の要請を受け入れた。(野田華奈子)

KC130空中給油機
 空中や地上で、米海兵隊と米海軍の航空機に給油する任務のほか、部隊や物資の輸送に当たる。機内や外付けのタンクからホースを通じて燃料を送る。最大輸送人員は92人。戦場などの厳しい環境下でも、短い滑走距離での発着が可能という。米軍普天間飛行場には垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ24機に次いで多い15機が配備され、米海兵隊岩国基地にもたびたび飛来していた。

【解説】基地負担軽減 検証を

 在日米軍再編を軸に、米海兵隊岩国基地の拠点性が高まりつつある。KC130空中給油機部隊の移転はその序章にすぎない。

 日本政府は、米軍の戦略的な意味合いより「沖縄の基地負担軽減」を前面に再編への協力を求めてきた。国内の米軍専用施設の7割が集中する沖縄。特に住宅地と隣り合う普天間飛行場の危険性は返還合意後18年間も放置され続けている。

 だが米軍は部隊の移転後も給油機は引き続き沖縄に飛来し、演習や訓練で普天間飛行場などを使うと明言する。結局は米軍の都合であり、政府の言う「負担軽減」は表向きの理屈との印象は拭えない。移転後の騒音測定値の比較など、国の検証は不可欠だ。

 中国や北朝鮮の動向が注視される中、沖縄より距離が近い岩国基地の存在感が強まれば抑止力も増す―。そんな米軍の意図による岩国基地の機能強化ではないか。そして市民にもたらされる情報は極めて乏しい。

 基地負担というリスクは常に市民を脅かす存在だ。3年後に迫る空母艦載機移転。さらに最新鋭ステルス戦闘機F35の配備構想もある。その先に暮らしの安心安全を確保できるのか、十分な情報収集と議論が要る。政府と米軍のはざまで、岩国が「意志なきまち」になってはならない。(野田華奈子)

(2014年7月16日朝刊掲載)

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