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社説・コラム

社説 マレーシア機撃墜 即時停戦し真相究明を

 あってはならないことが起きた。マレーシア航空の旅客機がウクライナ東部で何者かに撃墜された。軍用機と間違われたのかもしれない。

 罪のない一般人や子どもたち298人が犠牲となったという。どうしてこのような悲劇が起きたのか、徹底して原因を究明しなければならない。

 ウクライナ東部では今月に入り、政府軍と親ロシア派武装組織との戦闘が再び、激しさを増していた。

 ウクライナ政府は今回、親ロ派とロシア軍幹部との会話とされる盗聴記録を根拠に「親ロ派側が撃墜した」と主張する。一方、親ロ派側は「ウクライナ政府軍の仕業だ」と反論する。

 紛争の当事者が相互に非難し合うばかりでは、何も解決しないことは明らかだ。

 まずは、ただちに停戦すべきである。そのうえで双方とも、真相の解明に全面的に協力してもらいたい。

 墜落したのは、アムステルダム発クアラルンプール行きのボーイング777型機で、約1万メートル上空を飛行中だったらしい。

 米国のレーダーは、墜落の直前に地対空ミサイルシステムが起動し、航空機を追跡する様子をとらえていたという。

 ロシア製の地対空ミサイルが旧ソ連諸国を中心に広く流通しているという。また現在、ウクライナに展開する親ロ派にはロシアから、相当量の武器や人員が流れているともいわれる。

 もし、そうした兵器が今回の墜落に関係していることになれば、ロシアの責任を問う声は高まろう。

 そのプーチン大統領は、調査に取り組む姿勢を示しながらも、「事件の起きた国に責任がある」としてウクライナを非難している。こうした発言は、わが身に火の粉が降りかかることへの予防線と受け止められても仕方あるまい。

 当面の課題は、国連の潘基文(バンキムン)事務総長も指摘する「完全で透明性のある国際的な調査」であることは言うまでもない。紛争当事者やその支援国による調査だけでは、かえって疑心暗鬼が広がりかねないからだ。

 東西冷戦下の1983年に起きた大韓航空機撃墜事件を思い出す。領空を侵犯した大韓航空の旅客機をソ連軍の戦闘機が撃墜したが、ソ連側は当初、関与を全面否定した。

 ソ連軍の無線を日本が傍受したテープが米国によって公開されて初めて、撃墜を認めた。ところがブラックボックスを回収したことも長い間、隠していた。

 迅速で公正、中立な調査が欠かせない歴史の教訓であろう。

 その意味でも今回、現地に向かった欧州安保協力機構(OSCE)の調査団が鍵を握りそうだ。OSCEはウクライナやロシアをはじめ、米国やオランダなどが加盟する安全保障機構である。中立的な立場を貫き、一刻も早く真相を明らかにしてほしい。

 そのためにも現場の保存が不可欠となろう。マレーシア機のブラックボックスも国際的な監視下に置き、早急に分析されなければならない。

 日本も積極的な役割が求められる。折しも、岸田文雄外相はウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領らと会談したばかりだった。真相究明に当たっても、力を尽くしたい。

(2014年7月19日朝刊掲載)

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