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病人34%「原爆が原因」 都内被爆者 東友会が最後の調査 報告書500部発行「苦しみ・思い 後世に」

 東京の被爆者団体「東友会」は、都内に暮らす被爆者の健康や暮らしに関する実態調査の報告書をまとめた。病気がある人の約34%が「原爆が原因」と回答。被爆から約70年たっても消えない心身への不安の声について専門家の分析も加えた。被爆者の高齢化が進む中、同会は「最後の調査」と位置付けている。(藤村潤平)

 都内在住の被爆者は3月末現在、6361人。うち同会が把握する4805人に調査用紙を郵送し、1795人が回答した。設問は被爆した不安や、病気と原爆の因果関係をめぐる意識など21項目。病気と原爆の因果関係では、病気がある人のうちの34・2%が「原爆が原因だと思う」と回答。11・4%が「原因ではない」、54・4%が「分からない」とした。

 自由記述について、一橋大大学院の根本雅也特任講師(35)=社会学=たちが内容を分類して分析。原爆と病気の因果関係で、いずれの回答を選んだ人も「原因を科学的に厳密に知ることができない葛藤や苦悩がある」と指摘。身体的な影響とともに「被爆者の生に影響を及ぼしたことは疑いを得ない」と強調した。

 被爆者を対象にした一般健診とがん検診の受診率も比較。一般健診の66・0%に対し、がん検診は45・0%と21ポイントも低かった。がん検診の利便性や認知度の低さなどを理由に挙げた。

 調査は1997年以来。東友会の山本英典理事(81)は「高齢化のため自筆で回答できない人もおり、これが最後の調査。数値や科学的な知見では表せない、被爆者の今なお続く苦しみや思いを後世に残したかった」と話す。

 報告書はA4判、144ページ。500部を発行し、広島市などの自治体や原爆資料館(広島市中区)などの平和関係施設、研究者に配り、被爆者施策に役立ててもらう。

(2014年7月21日朝刊掲載)

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