社説 節電の夏 無理せず できる限りを
14年7月23日
中国地方はおととい、山口県も含めた九州北部はきのう、梅雨明けが発表された。西日本はいよいよ夏本番を迎えた。
東日本大震災以降で初めて列島の全原発が稼働しない夏だ。天気予報は5年連続の猛暑になる可能性があるという。熱中症が増えないか、心配が募る。
できる限り、さりとて決して無理をせず、国を挙げての節電に取り組まなければならない。
今月から夏の節電を政府は呼びかけている。ただ9月末までの間、沖縄を除く電力会社9社が融通し合うことを前提に、政府は昨年に続いて節電の具体的な数値目標は設けていない。
景気回復に水を差したくない思惑もあるらしい。とはいえ使い放題となれば、ピーク時の電力需給は相当に厳しくなろう。
需要に対する供給の余裕度を示す「予備率」は中国電力の場合、今春段階の想定で4・1%だ。これは震災前の2010年並みの猛暑でも、最需要期になお47万キロワットの「予備力」、つまり供給余力があることを示す。
安定供給の最低限の目安とされる予備率3・0%は上回るが、昨年の実績5・0%は下回るとの見立てである。景気の回復基調に加え、節電意識が薄まっている影響といえよう。
その後、政府からの要請を受けて中電は、さらに3万キロワット分の予備力を積み増すと発表した。企業を中心とした節電でピーク時の需要を2万キロワット減らすとともに、他社の火力発電所からの調達を1万キロワット増やす計画とした。
それでも、24基ある自前の火力発電所のうち、補修に入る1基を除く23基をフル稼働させることが供給計画の大前提だ。中でも運転開始から30年を超えた火力は10基あり、中電は「パトロールを強化して故障リスクを小さくする」という。安定稼働に全力を尽くしてほしい。
全国では関西電力と九州電力エリアの電力不足が最も懸念されている。いずれも東京電力から供給を受け、かろうじて予備率3・0%に届くという綱渡りである。もし想定外の事態が起きれば、エリアを接する中電からの支援強化も必要となろう。
しかも、これら予備率の算定ではあらかじめ、中電の場合で3・6%分の節電が「定着分」として織り込んである。これは実質的な中国地方の数値目標ともいえそうだ。
ただ家庭では、さほど深刻にならずとも達成できる水準ではなかろうか。冷蔵庫は、設定を「中」にして扉の開閉を最小限にする。テレビなどは主電源をオフにしたり、コンセントからプラグを抜いたりして待機電力を減らす。政府によると、それぞれ2%の節電になる。
暑い盛りの日中に公共施設や店舗で涼を取り、スタンプラリーも楽しめる。広島県が始めた「クールシェア」3年目の取り組みなども有効活用したい。
もちろん、お年寄りや乳幼児にとっては、室内にいても熱中症に要注意の時季である。体調管理のためのエアコン使用は節電の対象外だと意識しよう。
そのためにもオフィスや工場は、もう一段の知恵を絞り、工夫を凝らしてもらいたい。
この夏を乗り切れば済む話でもない。地球に優しいライフスタイルを、いかに末永く続けていくかが問われる。その意味でも、無理強いではなく、自主的な取り組みが肝要となろう。
(2014年7月22日朝刊掲載)
東日本大震災以降で初めて列島の全原発が稼働しない夏だ。天気予報は5年連続の猛暑になる可能性があるという。熱中症が増えないか、心配が募る。
できる限り、さりとて決して無理をせず、国を挙げての節電に取り組まなければならない。
今月から夏の節電を政府は呼びかけている。ただ9月末までの間、沖縄を除く電力会社9社が融通し合うことを前提に、政府は昨年に続いて節電の具体的な数値目標は設けていない。
景気回復に水を差したくない思惑もあるらしい。とはいえ使い放題となれば、ピーク時の電力需給は相当に厳しくなろう。
需要に対する供給の余裕度を示す「予備率」は中国電力の場合、今春段階の想定で4・1%だ。これは震災前の2010年並みの猛暑でも、最需要期になお47万キロワットの「予備力」、つまり供給余力があることを示す。
安定供給の最低限の目安とされる予備率3・0%は上回るが、昨年の実績5・0%は下回るとの見立てである。景気の回復基調に加え、節電意識が薄まっている影響といえよう。
その後、政府からの要請を受けて中電は、さらに3万キロワット分の予備力を積み増すと発表した。企業を中心とした節電でピーク時の需要を2万キロワット減らすとともに、他社の火力発電所からの調達を1万キロワット増やす計画とした。
それでも、24基ある自前の火力発電所のうち、補修に入る1基を除く23基をフル稼働させることが供給計画の大前提だ。中でも運転開始から30年を超えた火力は10基あり、中電は「パトロールを強化して故障リスクを小さくする」という。安定稼働に全力を尽くしてほしい。
全国では関西電力と九州電力エリアの電力不足が最も懸念されている。いずれも東京電力から供給を受け、かろうじて予備率3・0%に届くという綱渡りである。もし想定外の事態が起きれば、エリアを接する中電からの支援強化も必要となろう。
しかも、これら予備率の算定ではあらかじめ、中電の場合で3・6%分の節電が「定着分」として織り込んである。これは実質的な中国地方の数値目標ともいえそうだ。
ただ家庭では、さほど深刻にならずとも達成できる水準ではなかろうか。冷蔵庫は、設定を「中」にして扉の開閉を最小限にする。テレビなどは主電源をオフにしたり、コンセントからプラグを抜いたりして待機電力を減らす。政府によると、それぞれ2%の節電になる。
暑い盛りの日中に公共施設や店舗で涼を取り、スタンプラリーも楽しめる。広島県が始めた「クールシェア」3年目の取り組みなども有効活用したい。
もちろん、お年寄りや乳幼児にとっては、室内にいても熱中症に要注意の時季である。体調管理のためのエアコン使用は節電の対象外だと意識しよう。
そのためにもオフィスや工場は、もう一段の知恵を絞り、工夫を凝らしてもらいたい。
この夏を乗り切れば済む話でもない。地球に優しいライフスタイルを、いかに末永く続けていくかが問われる。その意味でも、無理強いではなく、自主的な取り組みが肝要となろう。
(2014年7月22日朝刊掲載)