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日銀「広島開業の地」売却へ 戦前は行政・経済の中心街

 日銀は、明治時代に出張所として営業を始めた広島市中区加古町の所有地を本年度、売却する。1世紀余り、所有してきた「広島開業の地」で、近年は独身寮があったが不要となった。戦前、一帯は広島の行政や経済の中心街で、そのわずかな名残が消える。

 売却するのは2277平方メートルの土地と、鉄筋3階地下1階延べ1143平方メートルの独身寮。日銀はこの地で1905年に広島出張所を開き、11年に支店に昇格させた。中区袋町に36年に移るまで31年間、加古町で営業した。その後、所有地には社宅を設け、1951年から2012年までは独身寮があった。行員が減少して寮の利用が減り、建物と土地を売ることにした。

 一帯は明治から昭和初期にかけて行政と経済の中枢エリアだった。日銀の西側に1878年から1945年の原爆投下まで県庁が、その北西には1889年から1928年まで市役所があった。

 戦前、幼少期にこのエリアに住んでいた広島都市学園大(南区)の古沢敏昭学長(82)は「重厚でモダンな建物が建ち、街は整然とした雰囲気だった。元安川沿いには、広い庭園のある豪邸が数軒あった」と記憶する。

 一帯は原爆で被災。現在はマンションや店舗、オフィスビルが並ぶ。県庁だった場所にはアステールプラザと市文化交流会館が建ち、文化活動の拠点になっている。

 日銀は、利用の見込みがなくなった公舎など遊休資産の売却を進めている。加古町の所有地は、本年度中の一般競争入札での売却を目指す。(境信重)

(2014年7月23日朝刊掲載)

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