×

社説・コラム

信頼醸成を欧州に学ぶ 来月2日広島で「核廃絶」シンポ 平和研の吉川所長に聞く

 「信頼醸成から核廃絶へ―2015年NPT再検討会議に向けて」をテーマにした国際シンポジウムが8月2日、広島市中区の広島国際会議場で開かれる。日本を含む東アジアで歴史認識や領土問題に端を発する国家間の緊張が高まる今、なぜ信頼醸成なのか。被爆地の目指す核兵器廃絶とどうつながるのか。欧州の安全保障機構に詳しい、広島市立大広島平和研究所の吉川元(きっかわ・げん)所長に聞いた。(宮崎智三)

 欧州では冷戦期、ソ連の提案で欧州安全保障協力会議(CSCE)が発足。安全保障や経済、人道面での協力などで東西両陣営間の緩衝機能を果たし、冷戦終結にもつながった。今は欧州安全保障協力機構(OSCE)に名称を変え、紛争の発生・拡大を防ぐ予防外交などに尽力している。

 OSCEの会議では、57の加盟国の大使が毎週集まる。クリミア半島をめぐりウクライナとロシアが対立した時もそうだった。激しいやりとりがあったが、今の日本と中国の間には、そうした対話の場すらない。

 何度も戦火を交えたフランスとドイツの取り組みも参考になる。国境のアルザス・ロレーヌ地方の石炭資源も一因となったため、第2次世界大戦後、両国の天然資源を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体が設立された。欧州共同体(EC)を経て、欧州連合(EU)にまで発展。平和な欧州の基盤となった。

 東アジアでも、EUやOSCEのような安全保障共同体ができれば、武器も軍事同盟も要らなくなる。もちろん一気にはできない。しかし国際関係の中に戦争を防ぐ仕組みをつくっていく必要がある。まず離散家族の再会など人道問題の解決や軍事演習の事前通告など信頼醸成措置をはじめ欧州の経験から学び、小さなことから始める。それが、核兵器廃絶や世界の平和に近づくことにもつながる。

 シンポは、広島市立大と長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)、中国新聞社の主催。早稲田大大学院の李鍾元(リー・ジョンウォン)教授(東アジア国際関係)とOSCEのイアン・ミッチェル対外政策部長が基調講演。韓国・世宗研究所の陳昌洙(ジン・チャンス)日本研究センター長、外務省総合外交政策局の山上信吾審議官、RECNAの鈴木達治郎・副センター長らの報告に続き、李教授やミッチェル対外政策部長ら5人によるパネル討論がある。午後1~5時。同時通訳付き。無料。申し込み不要。平和研Tel082(830)1811=平日のみ。

(2014年7月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ