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社説・コラム

『潮流』 フランスとドイツに学ぶ

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長・宮崎智三

 「戦争を終わらせるための戦争」。そう呼ぶ人もいた第1次世界大戦は、100年前の今月28日に始まった。残念ながら、戦火はその後もやむことはなかった。大戦が終わって20年もすると、欧州は再び戦場となった。

 人類は、どれほど進歩してきたのだろうか。国の内外で、軍事力に頼る動きが目立つようになってきた今、そう問い掛けてみたくなる。1万6千発を超す核兵器に脅かされたまま、広島は来年、被爆70年を迎える。

 武力で植民地や資源を奪い合う野蛮な時代は幕を引きつつあるとの見方もあろう。事実、第2次世界大戦後、西ヨーロッパは落ち着いている。歴史認識や領土問題をきっかけに国家間の緊張が高まっている東アジアが、学ぶことは多そうだ。例えば欧州連合(EU)や、旧ソ連諸国を含む欧州安保協力機構(OSCE)など、地域を安定させる仕組みをどうつくってきたのか―。

 フランスとドイツが積み重ねてきた努力も大きい。国境に近いアルザス・ロレーヌ地方などをめぐって何度も戦火を交えてきた両国。対立を解消したのは、武力ではなく、対話を通して互いの信頼関係を築いてきたからだ。

 戦争の一因ともなった資源を共同管理しようとの発想が発展して、後のEUにつながった。対話を重ねて信頼を築くことこそ、武力に頼らない世界への一歩となる。

 もちろん、そのまま日本や中国に当てはまるほど単純ではあるまい。それでも、参考にできることがあるはずだ。

 核兵器廃絶への道筋を、OSCEの役割など欧州の経験に学びながら探る。そんなテーマの国際シンポジウムを8月2日の午後、広島市中区の広島国際会議場で開く。  被爆地が長年訴え続けてきた核も戦争もない世界。それは、東アジア地域の安定の先に見えてくるのだろう。

(2014年7月24日朝刊掲載)

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