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社説・コラム

社説 佐賀にオスプレイ 「共用空港」許されるか

 民間専用空港の佐賀空港(佐賀市)を拡張し、垂直離着陸輸送機オスプレイを配備する計画が浮上した。自衛隊による導入に加え、米海兵隊のオスプレイも「暫定使用」するという。

 人口密集地の上空や夜間に飛ぶなど、海兵隊オスプレイの沖縄でのルール逸脱は日常茶飯事である。本土への移駐は容易には受け入れられないだろう。まして民間空港をわざわざ自衛隊と米軍に提供させようとする意図は、到底理解できない。

 なぜ九州一円の既存の自衛隊施設を活用しないのか。理由を防衛省は説明すべきだろう。

 佐賀県議会と佐賀市議会はかねて、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の部隊の佐賀空港移転には反対を決議している。候補地として取り沙汰されたことから、先手を打った。

 ところが、その意思表示がこのたびは無視された格好である。防衛省の要請に対し、地元が憤るのは当然だろう。

 しかも同省は来年度予算に必要な事業費を盛り込むため、概算要求が締め切られる8月末までに県の理解を得たいという。一方的に期限を切るなど、高飛車としかいいようがない。

 事を性急に運ぶ背景の一つには、11月の沖縄県知事選があるのだろう。普天間の移設先となる名護市辺野古の埋め立てを承認した現職、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏は3選へ立候補する決意を固めたものの、劣勢も予想される。

 そこで既に始まった空中給油機部隊の米海兵隊岩国基地(岩国市)への移駐と併せて、オスプレイの移駐を一気に進めようという腹だろう。これによって普天間の5年以内の運用停止が実現に近づき、現職に有利に働くのかもしれない。

 同時に長崎県佐世保市に新設する陸上自衛隊「水陸機動団」と佐賀空港の一体的運用もにらんでいる。日本の南西方面の「離島奪還作戦」を担う部隊で、その輸送手段を陸自が導入するオスプレイが担うのだ。

 しかし、民間専用空港が、そうした「作戦」に組み込まれるとは全く筋違いではないか。

 そもそも佐賀空港は1998年の開港に先立つ90年に、管理する県と地元漁協との間で自衛隊と共用しないことを確認している。地域振興に寄与する空港と認め、周辺住民も騒音問題などでは折り合ったに違いない。現在の収支はかんばしくないものの、中国や韓国の格安航空会社の誘致にも努めてきた。

 自衛隊や米軍との共用はその努力に水を差す。さらに民間機の運航に及ぼす支障や危険性が全くないとは言い切れない。

 政府・与党は在日米軍再編で負担が増える都道府県を対象に新たな交付金制度も検討するという。佐賀空港と同じように収支悪化に苦しむ地方の空港を、自衛隊や米軍と共用する際のアメとして用意するのだろう。

 また、オスプレイ配備にとどまらず、地方の空港が米空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)に使われる恐れもある。いったん運用を認めれば、今度は既存の基地の負担軽減の名の下に、恒久的に押し付けられることも想像に難くない。

 佐賀県の古川康知事は「(共用で)財務面が強化されるという認識は全くない」と、財政支援の側面があることは否定した。ならば県民の不安が募ることのない道を選ぶべきだろう。

(2014年7月24日朝刊掲載)

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