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社説・コラム

ズームやまぐち 上関推進派 結束固め 原発再稼働へ政府がかじ 自営業者ら勉強会

原発再稼働へ政府がかじ

 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が今秋にも再稼働する見通しとなる中、中国電力が上関原発建設を計画する上関町で、原発推進派が結束の再確認に動きだしている。計画は福島第1原発事故後、凍結状態だが、自営業者たち主体の上関町青壮年連絡協議会(青壮協)は先月末、外部講師を招き、勉強会を初開催。原発活用へかじを切った政府に呼応する取り組みで、推進派内の「世代交代」の表面化ともいえる。(井上龍太郎)

 原発に関する知識を学ぶ勉強会は6月29日、北海道教育大の鵜飼光子教授(環境科学)や原発を推進する日本原子力産業協会(原産協会)の佐藤克哉常務理事を招き、「食品と放射線」をテーマに町中央公民館で開いた。会員たち20人が参加。町議、中電社員の姿もあった。

 青壮協は勉強会を継続し、子育て世帯や反対派住民にも参加を呼び掛けるという。「福島の事故後、原発の危険性ばかり取り上げられる。住民の理解をいま一度深めたい」と藤井快宏会長(62)。有識者を町に招き、全国的な関心をつなぎとめる意図もある。

 抗議行動や集会を展開する反対派と違い、数で常に優位に立つ推進派は表立った動きは少ない。近年では地元6団体が2010年5月に大規模な総決起大会を開いた程度。翌年の福島第1原発事故以降は影を潜め、上関原発計画は準備工事中断から3年が経過した。

 青壮協は推進派の建設業者や小売業などの個人事業主を中心に構成。自治会青年部の連合組織にあたる。ことし4月には原産協会の年次大会に参加し、他の原発立地自治体の団体と意見交換した。

 勉強会を初開催した6月29日は、1982年に当時の上関町長が原発誘致を表明した日だった。計画浮上から33年目。第一線にいた推進、反対両派の住民は一様に年を重ねた。青壮協の動きは原発建設による商売や町財政への恩恵を目的に、推進派の「若手」が前面に出た形といえる。

 川内原発1、2号機が16日、原子力規制委員会の審査に事実上合格し、今秋にも再稼働の見通しとなった。国のエネルギー基本計画は新増設に触れていないものの、青壮協は「再稼働の先に新増設がある」とする。

反対派は警戒

 一方、反対派は警戒を強める。上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(59)は「政権が代わり動きはあると思っていたが。あれだけの事故を経験したのに信じられない」と批判する。

 ただ445人が暮らす反対派の拠点、祝島の高齢化率は6月末で75・51%。島民の会は3月、上関原発に反対する大規模集会を山口市で共同開催し、約7千人(主催者発表)を集めた。実行委員会に名を連ねた各地の脱原発団体との交流、連携を深めて計画の撤回を目指す。

(2014年7月25日朝刊掲載)

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