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今後の民間被爆建物保存「不安」65% 広島市65施設の所有・管理者 本紙アンケート

 中国新聞は、広島市が被爆建物として登録している民間65施設を対象に、保存・活用に関するアンケートをした。全施設の所有者や管理者が回答。65%が今後の保存に不安を抱いていることが分かった。災害による損壊や、維持費の負担がその理由。「物言わぬ証人」を次代に引き継ぐ方策が急務になっている。

 爆心地から半径5キロ以内で、市の台帳に登録されている民間の被爆建物の内訳は、寺社など宗教関連が55施設、企業所有10施設。

 これらのうち「不安がある」と答えたのは42施設。理由は「維持費の負担が重い」「台風などの自然災害による被害が心配」などだった。寺社には「後継ぎがいない」との声も。既に廃寺もあった。

 22施設は補強工事をするなどし「不安がない」と答えた。企業の1施設は「現在の利用状況を開示していない」として不安の有無を明かさなかった。

 アンケートでは、今後の保存の意思も聞いた。寺社を中心に9割近い56施設は「永久保存」の意向。「解体も視野」としたのは3施設で、広島アンデルセン旧館(中区)旧中国配電南部変電所(南区)観音寺(東区)だった。「今の状態では耐震性が不安で大規模改修はやむを得ない」「観光客も来ないし活用策がない」などとした。ほかは、「5~10年は保存するがそれ以上は分からない」が2施設。4施設は、未定などを理由に答えなかった。

 市は1993年度に登録を始めた。現在、国や広島県、市が所有する計20施設と合わせ全85施設が登録されている。96年度には98施設あり徐々に減っている。市は民間向けに、3千万円を上限に保存工事費の4分の3を助成する制度を設け、19施設に計2億1800万円を交付した。

 松井一実市長は「建物自身が持つメッセージを的確に伝えるため、弾力的で多彩な支援策を考えたい」とし、来年の被爆70年に向けて制度を見直す方針を示している。(加納亜弥、和多正憲)

(2014年7月26日朝刊掲載)

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