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非核の訴え 世界で発信 ユース特使 活動1年 進まぬ志望者の多様化

 核兵器の悲惨さを訴える若い世代を後押しする外務省の「ユース非核特使」制度が今月、活動開始から1年を迎えた。高校生や20代の若者計35人が被爆国の代表として国際的な会合でスピーチするなど活躍した。一方で志望者は一部の関係者に限られ、人材の多様化が進まない課題も見える。(藤村潤平)

 「核兵器のない世界を積極的に訴えていただいた。核軍縮の機運が、世代を超えて一層高まることを期待したい」。岸田文雄外相(広島1区)は22日の記者会見で成果を強調した。

 制度は高齢化が進み、声が細る被爆者の現状を知る岸田氏の肝いりでつくられた。特使は原則15~29歳で、過去に核軍縮・不拡散分野での活動や研究の実績があることが主な条件。地方自治体や学校、NPO法人といった団体・組織などが申請し、外務省が審査する。認められれば「特使」を名乗れるが、渡航費用の補助などの資金面の支援はない。

 特使になった35人の所属や派遣元は3団体。長崎、広島市の市民団体による高校生平和大使の24人▽広島市長が会長を務める平和首長会議の8人▽非政府組織(NGO)ピースボートの3人。外務省は、国際会議に出席する若手研究者たちも想定していたが、申請はなかった。

 申請が3団体にとどまっている現状に、担当する外務省軍備管理軍縮課の野口泰課長は「知名度不足。多くの人に興味を持ってもらう必要がある」。同省は、6月に神奈川県であった日本非核宣言自治体協議会の設立30周年記念大会で、参加した82自治体に制度をアピールした。

 特使になった若者たちは制度の改善点をどう見ているのか。4月に米ニューヨークでの核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会の関連行事に参加した広島女学院高3年の今井穂花(ほのか)さん(17)は、派遣先だけに限られている特使の活動の幅を広げるよう提案する。

 今井さんは「国の代表という誇りと責任をかみしめ、身が引き締まるし、スピーチに耳を傾ける相手の反応も違う。帰国後に成果を報告する場面でも特使と名乗れたら、活動はもっと充実するはず」と話す。

 ピースボートの川崎哲(あきら)共同代表は「制度の継続、発展には核をめぐる国際情勢やプレゼンテーションの手法を学ぶ専門の研修が必要だ」と指摘。広島、長崎両市と連携し原爆の日の式典で特使を活用してPRするなど、「国として積極的な人材の掘り起こしが不可欠だ」と提言する。

(2014年7月27日朝刊掲載)

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