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被爆を超えて 創業110周年 中区の羽田別荘

■記者 新田葉子

 広島市中区の料亭「羽田(はだ)別荘」が創業110周年を迎えた。最盛期には所属歌劇団が県内外で活躍し、小動物園やバラ園も併設した。原爆で全焼し、多くの客や従業員が亡くなったが再建。歴史を紡ぎ続けている。

 現在経営するのは、羽田篤司さん(72)、悦子さん(61)夫妻。1900年に茶室を作った創業者の故羽田謙次郎さんの孫にあたる。

 18年には少女歌劇団を結成。関西や中国東北部も訪れ、本格的なショーを披露していた。しかし、原爆投下で建物は焼け、篤司さんの父親も被爆死した。広島原爆戦災誌には「八七体の屍体が発掘されたという」と記されている。築山の陰で助かったという篤司さんの母親が48年ごろに営業を再開。植木を買い足し、庭を築いていったという。池の縁や滝の石組みの一部は、戦前のままだ。

 悦子さんは「風情を残し、新しい趣向も取り入れながら大事に守っていきたい」と思いを新たにしている。

(2010年9月29日朝刊掲載)

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