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「近距離だけ積極認定」 原爆症審査を被団協が分析

■記者 岡田浩平

 厚生労働省の4~6月の原爆症認定審査で「積極認定」の対象である白内障や心筋梗塞(こうそく)でも爆心地から近距離で被爆した事例しか認定されていないことが30日、日本被団協などの分析で浮き彫りになった。「被爆者を切り捨てている」と批判し速やかな改善を求める。

 現行の審査基準では、爆心地から3.5キロ以内で被爆▽原爆投下から約100時間以内に約2キロ以内に入市―などの条件を満たす七つの病気は積極認定の対象になっている。

 厚労省が9月に公表した審査結果を分析したところ白内障は4件を認定、269件を却下。認定されたのは1.2キロ以内で被爆した事例で、それ以遠や入市被爆者の認定はなかった。心筋梗塞も認定された14件は1.3キロ以内。入市被爆者の認定はなく、却下は277件。肝機能障害や甲状腺機能低下症も同様の傾向だったという。

 厚労省は詳しい却下理由を明らかにしていない。省内で記者会見した被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は、放射線起因性を厳しく判断する古い基準の考え方が残っていると指摘。「現行基準での改善を最大限要求していく」と険しい表情だった。

 広島の爆心地から2.8キロの尾長町で被爆した吉岡公治さん(66)=広島市西区=は、積極認定の対象である心筋梗塞で認定申請したが却下された。「実際の審査では『被爆と病気は関係ない』と切り捨てる国は、健康に不安を抱える被爆者をだましているとしか思えない」と憤っている。

(2010年10月1日朝刊掲載)

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