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被爆者の苦しみを寓話に 長崎の劇団 9・10日に広島公演

 長崎市を拠点に活動する劇団「F’s Company(フーズ・カンパニー)」による演劇「マチクイの諷(うた)」が、9、10の両日、広島市の東区民文化センターホールで上演される。

 2006年初演の同作は、長崎市出身の劇作家福田修志さんが祖母から聞いた被爆体験を基に創作。被爆者が抱える苦しみや、その子孫から見た原爆を、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故にも着想を得て、寓話(ぐうわ)に仕立てている。

 小さな島で起こったエネルギー工場の爆発事故。20年を経て、人間の体が木になる「マチクイ」という名の病がまん延する。効率を求めてたどり着いた技術が生んだ悲劇に、怒りをぶつける先のない住民たち。そこに島のためだと、外部から研究者や支援者がやって来て―。

 マチクイにかかった人の苦しみ、自分が元気なことを罪悪感のように思う家族、直接の被害者とそうでない人の分断や対立、距離感。原爆や原発事故、病気や事件、身の回りのさまざまな出来事に重ね合わせることができる。

 09年には東京や宮崎で再演され、日本劇作家協会新人戯曲賞の最終選考にも残った。「原点は長崎の原爆だが、被爆体験という枠組みを超え、どこにでもある悲しみ、苦しみやそれに向き合う人々の姿を表している。それぞれの立場で向き合ってほしい」と福田さん。

 9日は午後7時半から、10日は午後2時から。一般3千円(前売り2500円)大学・専門学校生2500円(2千円)高校生以下2千円(1500円)。東区民文化センターTel082(264)5551。(森田裕美)

(2014年8月1日朝刊掲載)

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