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社説・コラム

『やまびこ』 胸打つ 戦地からの言葉

 戦地で、子を思う親の気持ちはどのようだったのか。庄原市西本町の壱柳道子さん(74)の父で、第2次世界大戦で、32歳で戦死した滝口薫三さんのことを取材し、そう感じた。

 戦死したとされるニューギニア島から35年前に戻った手帳。加えて滝口さんが家族に宛てたはがきも数枚残っている。フィリピンからの1枚に「時折こちらの子供を見ては(道子さんを)思ひ出しどんな生活して居るやらと種々想像してみます」とある。

 ジャングルで野営し、心身をすり減らす戦いの日々。故郷に残したまな娘の姿を何度も思い出し、それが支えとなったのだろう。

 記憶のない父の姿を追い求めた壱柳さんは「子や孫の代に戦争をする日本を残したくない」と話す。滝口さんの残した言葉は、その願いを伝える生き証人のようだ。記者として、親として、平和を伝える意味を庄原の地であらためて、かみしめた。(菊本孟)

(2014年8月1日朝刊掲載)

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