自衛隊志望者に不安感 集団的自衛権、広島県内の採用活動に影 意向再確認の高校も
14年8月4日
高校生を対象にした自衛官の採用活動が7月解禁になった。集団的自衛権の行使容認について明確な説明を避ける自衛隊の対応もあって、広島県内では入隊希望の生徒にあらためて意向を問い直す学校も。希望する高校生は、不安感を抱えながら進路を模索している。(中島大)
毎年1、2人が自衛官の採用試験に合格する山陽高(広島市西区)。進路指導担当の中本修司教諭(36)は「指導の難しさを感じている」という。集団的自衛権の行使容認で、自衛隊が海外の危険地域に派遣される恐れが出てきたためだ。
「入隊イコール海外派遣ではないとは思うが、これまでよりリスクが大きくなるのは明らか」。三者面談で、生徒と保護者に意向を再確認したという。
「生徒が中途半端な気持ちだったら『やめとけ』と言う」と話すのは、別の県内私立高で進路を担当する男性教諭(46)。「生きるか死ぬかの選択を迫られる場面が来る。よく考えて進路を決めるように話す」
隊員の採用を担う自衛隊広島地方協力本部(中区)によると、採用形態は自衛官候補生や防衛大生など14種類。広島県内の自衛官採用は2013年度は275人で2年連続で増えた。12年度は273人、11年度は163人だった。
当の生徒の気持ちは―。「自分たちが危険な場所に行くかどうか不安」と話すのは、山陽高3年若林徳寿さん(17)=広島市南区。同高3年大越一輝さん(18)=安佐北区=は「怖いのは怖い。ただ東日本大震災の時のように寡黙に復興支援をする姿に魅力を感じた」と戸惑いながらも入隊の意志は固い。
一方、自衛隊側も説明の難しさを抱えている。広島地方協力本部の野呂将治企画広報室長は「生徒や学校から集団的自衛権について聞かれても発言ができない」。上部組織である陸上幕僚監部(東京)の指示だという。
広島大大学院の永山博之教授(安全保障論)は「政府や自衛隊は関連法整備前に『隊員のリスクが増える』とはいえない。だが曖昧な対応が続くなら入隊志願者は減っていく。それは防衛力の低下を招くことにつながり、結局自衛隊のためにならない」と指摘している。
(2014年8月1日朝刊掲載)
毎年1、2人が自衛官の採用試験に合格する山陽高(広島市西区)。進路指導担当の中本修司教諭(36)は「指導の難しさを感じている」という。集団的自衛権の行使容認で、自衛隊が海外の危険地域に派遣される恐れが出てきたためだ。
「入隊イコール海外派遣ではないとは思うが、これまでよりリスクが大きくなるのは明らか」。三者面談で、生徒と保護者に意向を再確認したという。
「生徒が中途半端な気持ちだったら『やめとけ』と言う」と話すのは、別の県内私立高で進路を担当する男性教諭(46)。「生きるか死ぬかの選択を迫られる場面が来る。よく考えて進路を決めるように話す」
隊員の採用を担う自衛隊広島地方協力本部(中区)によると、採用形態は自衛官候補生や防衛大生など14種類。広島県内の自衛官採用は2013年度は275人で2年連続で増えた。12年度は273人、11年度は163人だった。
当の生徒の気持ちは―。「自分たちが危険な場所に行くかどうか不安」と話すのは、山陽高3年若林徳寿さん(17)=広島市南区。同高3年大越一輝さん(18)=安佐北区=は「怖いのは怖い。ただ東日本大震災の時のように寡黙に復興支援をする姿に魅力を感じた」と戸惑いながらも入隊の意志は固い。
一方、自衛隊側も説明の難しさを抱えている。広島地方協力本部の野呂将治企画広報室長は「生徒や学校から集団的自衛権について聞かれても発言ができない」。上部組織である陸上幕僚監部(東京)の指示だという。
広島大大学院の永山博之教授(安全保障論)は「政府や自衛隊は関連法整備前に『隊員のリスクが増える』とはいえない。だが曖昧な対応が続くなら入隊志願者は減っていく。それは防衛力の低下を招くことにつながり、結局自衛隊のためにならない」と指摘している。
(2014年8月1日朝刊掲載)