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「名実とも平和国家へ」 広島市の平和宣言 未来志向の対話提案

 広島市の松井一実市長は1日、被爆69年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。政府が閣議決定した集団的自衛権の行使容認の是非には踏み込まない。憲法の平和主義の下で戦争をしなかった事実に触れ「名実ともに平和国家」として歩み続けるよう訴える。

 宣言は「絶対悪」である核兵器をなくすための基本的な考え方として、憎しみの連鎖を生む武力ではなく、人と人とのつながりを大切に「未来志向の対話」を世界で重ねるよう提案。被爆者の体験や人生を自らに置き換えて考え、行動するよう呼び掛ける。

 被爆者4人の体験を引用。多くの級友を亡くして心に傷を負う動員学徒や、原爆孤児の戦後の生きざまを通じ「戦争文化ではなく平和文化」を創る努力を求める。オバマ米大統領の名を挙げて核兵器保有国の首脳たちに被爆地を訪れるよう要請。信頼と対話による安全保障への転換を迫る。

 一方、集団的自衛権の文言はなく「憲法の崇高な平和主義」の下で、戦後69年間戦争をしなかった事実の重みを指摘する。

 2011年3月の福島第1原発の事故以降は3年続けて「市民の暮らしと安全を守るため」などの言い回しでエネルギー政策の確立を政府に求めてきたが、今回は言及しない。松井市長は「国が政策決定していくべき課題。放射線被害の影響に苦しむ人々に寄り添うことに絞り問題提起をした」と述べた。(加納亜弥)

(2014年8月2日朝刊掲載)

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