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広島・長崎の平和宣言…集団的自衛権言及に違い 広島は触れず/長崎盛り込む

 ことしの広島、長崎の平和宣言の骨子が1日明らかになり、二つの被爆地の姿勢に違いが出た。憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に、広島市の松井一実市長が言及しないのに対し、長崎市の田上富久市長は文言を盛り込むことを明らかにした。(加納亜弥)

 松井市長は記者会見で、集団的自衛権に触れなかった理由を「崇高な平和主義の下、これまでの歩みを受け止めるよう求めることでしっかり言及できる。むしろ高い次元の考え方を打ち出した」と説明。宣言文を検討する有識者や被爆者の「被爆体験に関する懇談会」での議論を引き合いに、「任期最後の平和宣言として、市長としての基本的姿勢を丁寧に記述するほうがいいだろうとなった」とも強調した。

 集団的自衛権の行使容認をめぐって、松井市長は7月1日の閣議決定直後に「武力行使が際限なく拡大する懸念が拭えない」と批判。しかし行使容認への個人の賛否は語っておらず、今回の宣言にもそのスタンスがにじみ出た格好だ。

 市民団体「秘密法廃止!広島ネットワーク」がこの日、市に届けた、平和宣言に集団的自衛権の行使容認に反対する文言を入れるよう求める署名は1カ月で5591人分が集まった。

 一方、田上市長は記者会見で「状況を整理するため、集団的自衛権という言葉を入れた方が伝わりやすい」と述べた。集団的自衛権を含む安全保障をめぐる議論で、国民の中に広がった平和への不安と懸念に耳を傾けるよう政府に要望する。

(2014年8月2日朝刊掲載)

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