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社説・コラム

社説 海江田代表「続投」 内輪もめの暇あるのか

 与党が圧勝し、民主党が惨敗を喫した参院選から1年が過ぎた。低迷を続ける野党第1党が巻き返す転機になるかどうか。その意味でも注目されていた党の両院議員懇談会は海江田万里代表の続投が了承され、波乱もなく終わった。

 来年の任期満了を待たずに代表選を前倒しし、対立候補をぶつけて引きずり降ろす―。反執行部派による仕掛けは、とりあえず不発に終わったようだ。

 海江田氏は臨時国会前に党人事を検討し、求心力の維持を図るというが内紛の構図は残る。代表交代論は、今後もくすぶりそうだ。結束からほど遠い現状を考えれば、党勢回復への道は険しいと言わざるを得ない。

 集団的自衛権をめぐる強引な閣議決定に批判が高まり、報道各社の世論調査では内閣支持率がじわじわ下がっている。滋賀県知事選は与党系候補が敗れ、政治の「潮目」の変化を指摘する声も少なくない。なのに民主党への支持率は依然として1桁台に低迷している。

 これに対する党執行部の危機感は、やはり乏しい。

 おとといの両院議員懇談会は参院選敗北後、「1年以内に成果を挙げる」と約束した海江田氏の手腕を総括するため設定されたものだ。しかし党再生への議論どころか、十分な実績のないまま続投に腐心する代表の姿ばかり浮き彫りになったのは党にとってマイナスだろう。体制刷新のために一時浮上した大畠章宏幹事長の交代論も、うやむやのまま先送りされた。

 かといって海江田氏に退任を求める側に、立て直しへの戦略があるようにも思えない。

 民主党がなすべきことは明らかだ。まず政権与党時代に国民の期待を裏切った原因と、反省をおろそかにして国政選挙で敗北を重ねた経緯を今からでも厳しく検証すること。そして党内に意見の溝がある安全保障や原発政策の議論を急ぐことだ。

 特に集団的自衛権の問題では海江田氏自身、安倍政権との対決姿勢を鮮明にしている。ならば裏付けとなる党の方針があいまいでは心もとない。

 さらにいえば自民党1強時代に立ち向かう野党の在り方についても見つめ直すべきだ。

 きのうは日本維新の会から分党し、平沼赳夫氏を党首とする次世代の党が発足した。橋下徹氏のグループも「つなぎ政党」を経て、結いの党との合流を目指す。さらなる野党再編の動きがあるかもしれない。民主党はどんなスタンスを取るのか。

 そもそも国民がいま野党に望むものは何なのかを考えたい。

 政権の行き過ぎをただし、選挙で選択肢となる「対立軸」が求められるのは確かだろう。ただ政権に就く前の民主党のように二大政党を意識し、政策論議を尽くさずに勢力増ばかり重視するとすれば、過去の教訓を生かしていないことになる。

 経済政策や社会保障を含めて選挙でも当然、争点となる重要テーマで意見が食い違う議員はこの際外れてもらう。そんな覚悟も必要ではないか。

 安倍政権も来月初めに内閣改造と自民党役員人事で体制を固め、臨時国会以降に備える構えだ。ふがいない野党側の足元を見て「今のうちに」と早期の解散論すら語られ始めた。少なくとも不毛な内輪もめをする暇はどの党にもないはずだ。

(2014年8月2日朝刊掲載)

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