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広島の被爆寺で体験聞き発表へ 茨城の中学生使節団 「弟の死、涙でお経読めなかった」

 広島市東区牛田本町の被爆建物の一つ、安楽寺に1日、茨城県牛久市の「中学生平和使節団」の生徒20人が訪れた。前住職の登世岡浩治さん(84)から被爆体験を聞くため。昨夏に偶然、被爆建物巡りで寺を訪れた同市の中学生たちが縁をつないだ。

 「君たちと同じ年くらいの時。焼け野原で弟を捜し回った」。爆風で柱が傾いたままの本堂で、当時15歳だった登世岡さんは、12歳で被爆死した弟を振り返った。「寺で生まれながら弟の遺体を見るまで人の死を知らなかった。涙でお経が読めなかった」

 爆心地から約2キロの安楽寺は、原爆で屋根や壁が剝がれた。登世岡さんは1998年から毎年、地元の児童や生徒に本堂で「被爆講話」を続けてきた。そんな寺を昨夏訪れたのが牛久市教委が催す平和学習で広島を訪れた中学生有志だった。

 登世岡さんは請われ、生徒たちの宿泊先で、飛び入りであの日を語った。被爆建物でつながった縁を大切にしようと、市教委はことし、正式に登世岡さんへ講話を依頼した。

 牛久南中2年の木下孝太君(13)は「祖父母の戦争体験も聞いたことがない。こんな悲しい話とは。地元に戻って学校で話したい」と話した。「使節団」の生徒は今後、ヒロシマでの体験を記録にまとめ、地元で発表する。登世岡さんは「これも何かのご縁。同世代にしっかり伝えてもらいたい」と願っている。(和多正憲)

(2014年8月2日朝刊掲載)

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