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社説・コラム

『書評』 郷土の本 原爆詩と物語 子どもたちへ 吉永小百合さん編集

 現代っ子がヒロシマに思いをはせる物語と、被爆者たちの作った詩編を載せる「ヒロシマの風」=写真=が出版された。核兵器や平和について子どもたちが考えるきっかけにと、原爆詩の朗読会をライフワークにしている俳優吉永小百合さんが編集した。

 物語は、脚本家山室有紀子さんが書き下ろした「おばあちゃんの願い」。横浜の小学4年生みどりは、突然に入院した広島の祖母を見舞う。自分の名前が胎内で被爆死した祖母の妹と同名であり、新しく芽吹いてほしいとの願いが込められたと知り、ヒロシマについて考えてゆく。

 原爆詩は「ちちをかえせ ははをかえせ」で始まる峠三吉の「序」や栗原貞子の「生ましめんかな」、原民喜の「永遠(とわ)のみどり」、大平数子の「慟哭(どうこく)」など20編を収録する。

 編者の吉永さんは、1986年から原爆詩のボランティア朗読会を全国で開催。本書は著作「第二楽章 ヒロシマの風」を基に、詩の漢字全てに仮名を振り活字も大きめにした。挿絵をふんだんに使い、子どもに読みやすいよう工夫している。173ページ、648円。角川つばさ文庫。(祖川浩也)

(2014年8月3日朝刊掲載)

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