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青春奪った「あの夏」は 学徒動員中に被爆・府中町の江種さん 街の惨状生々しく証言

 学徒動員中に被爆した府中町の江種祐司さん(86)が2日、広島市中央図書館(中区)主催の講演会で原爆のすさまじさと、市街地の惨状を生々しく証言した。約60人が聞いた。(和多正憲)

 福山市出身。広島師範学校(現広島大)の学生で、17歳だった。爆心地から約6キロ離れた金輪島(現南区)で、陸軍への物資輸送の待機中だった。

 頬に熱を感じて間もなく、爆風を受けた。「すぐ隣で、爆弾が破裂したと思ったほど」。それほど、原爆はすさまじかった。

 被爆者の救護で、急ぎ市街地に向かった。今も記憶が鮮明な江種さん。講演も熱を帯びる。おびただしい黒焦げの遺体、皮膚が垂れ下がったままでうめく人たち…。「全てが破壊され、焼き尽くされていた。今も目に焼き付いて離れない」

 戦後、ピアノの勉強に打ち込む。学徒動員で奪われた時間を取り戻そうと、ひときわ熱心に。江種さんはそして音楽教師になった。

 熱弁を振るった江種さん。講演会後、こう付け加えた。「私の青春は原爆に奪われた。今の子どもたちには、あんな悲劇は二度と経験させてはいけない」

(2014年8月3日朝刊掲載)

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