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折り鶴再利用…羽ばたく祈り 広島で贈答箱やTシャツに加工 原爆ドーム保存・被災地支援にも一役

贈答箱やTシャツに加工

 広島市中区の原爆の子の像にささげられた折り鶴の再利用が広がっている。「託された平和への思いを昇華させる」という市の狙い通り、市民たちが再生紙に加工して贈答用の箱やしおりを製作。繊維に混ぜたTシャツも登場した。原爆ドームの保存運動や東日本大震災の復興支援の新たな役割も与えられ、各地で羽ばたいている。(川手寿志)

 平和記念公園に立つ原爆の子の像には、国内外から年間約1千万羽、計約10トンの折り鶴が届く。市が2012年5月から希望者へ無償提供を始め、ことし6月末までに国内外の139個人・団体に4100万羽、約35トンを引き渡した。使い道は、約30トンが再生紙などへの加工(45件)。展示(78件)、記念品・寄贈(42件)もあるという。

 折り鶴再生紙を使い、6センチ四方の箱の上にアーチ状の慰霊碑と折り鶴をあしらった贈答用の箱は、ともに被爆2世で、西区の写真家清水顕さん(63)と東区のデザイナー徳永真二さん(58)が7月に共同製作した。

 13年11月、撮影のため岩手県陸前高田市の寺を訪れた清水さんが、ヒロシマらしい被災地支援策を友人の徳永さんに相談。徳永さんがパッケージの図案を描いた。費用は2人で負担。商品化を目指し、収益の一部を被災地に贈る計画だ。清水さんは「広島のように復興を遂げてほしい」。

 徳島県阿南市のパルプ製造会社日誠産業は折り鶴をレーヨンに加工。大阪市中央区の繊維会社と共同で、素材に「折り鶴」を10%含んだTシャツやポロシャツをこの1年で相次ぎ製品化した。今は受注生産だが、島大樹開発部長(33)は「平和への思いを織り込んだ。平和を考えるきっかけになれば」と通信販売も検討している。収益の一部を広島市の原爆ドーム保存事業基金などに寄付する計画もある。

 原爆資料館(中区)の中・高校生ピースクラブの22人は折り鶴の再生紙でしおり500枚を作った。6日に平和記念公園で開くポスター展などで配る。ノートルダム清心高1年中村園実さん(16)は「国内外に持ち帰ってもらい、折り鶴の意味を家族や友人に伝えてほしい」と話す。市によると、米国やカナダの市民団体は、原爆展で折り鶴を展示しているという。

 市が保管している折り鶴は、なお約1億羽、約85トン。平和推進課は「形は変わっても平和への思いは変わらない。再利用の呼び掛けをさらに広げたい」と意気込んでいる。

(2014年8月3日朝刊掲載)

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