×

ニュース

臨界前核実験 事前発表を中止 米当局者認める 次回も継続の可能性

■記者 金崎由美

 米オバマ政権で初となる9月15日の臨界前核実験の実験場となった、米エネルギー省ネバダ国家安全保障施設の報道官は13日、過去23回の臨界前核実験時とは一転、事前発表しなかったことを認めた。その上で次回以降も事後の発表にする可能性に言及した。核軍縮の専門家からは、国際世論への「負の影響」を最小限に抑えたいオバマ政権の姿勢の表れとの見方も出ている。

 1997年から始まった臨界前核実験では、慣例として毎回48時間前に報道機関などに実施予定を発表してきた。報道官は「今後も『事前』には縛られない」と説明。来年初めまでに予定している次回実験も事後発表になるとみられる。

 今回、前例を転換した理由について報道官は「事前発表はあくまで好意だった」と話し、自らの裁量であることを強調。臨界前核実験は核兵器の維持管理計画(SSP)の一部であるとし「SSPに絡むほかの実験やプログラムは事前発表していない」と述べた。

 包括的核実験禁止条約(CTBT)は、爆発を伴わない核実験を禁止していない。しかし、核爆発が起きない臨界前核実験もまた、「効果的な核抑止力を長期間保持することが前提」の行為であり、CTBTの精神に背くとの意見は根強い。

 事前発表の中止に対し、核軍縮が専門の大阪女学院大大学院の黒沢満教授は「国際世論への負の影響を考慮したのではないか」と指摘。一方で、臨界前核実験に踏み切ったことについては「核兵器の信頼性維持を懸念する米国内の保守派にはメッセージを送る、というバランスが働いたのかもしれない」との見方を示している。

包括的核実験禁止条約(CTBT)
 大気圏内や宇宙、地下での爆発を伴う核実験を禁止する。現在182カ国が署名、日本を含む153カ国が批准している。研究・発電用の原子炉を持つ44カ国のすべての批准が発効条件だが、米国、中国、イラン、エジプト、インドネシア、イスラエルが未批准。北朝鮮、インド、パキスタンは署名もしていない。オバマ政権は早期の批准実現を掲げるが、議会保守派の間では「臨界前核実験だけでは核抑止力の維持はできない」などの主張がある。

(2010年10月14日朝刊掲載)

関連記事
米が臨界前核実験 9月15日 オバマ政権で初(10年10月13日)

年別アーカイブ