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米臨界前核実験 座り込み 怒るヒロシマ

■記者 金崎由美、野田華奈子

 米オバマ政権で初めて9月15日に臨界前核実験が実施されていたことを受け、被爆地・広島では13日、被爆者や市民が、中区の平和記念公園で座り込みをするなど抗議の声を上げた。原爆資料館東館にある「地球平和監視時計」は、臨界前核実験からの日数に合わせてデジタル表示を「506」から「28」に後退させた。

 原爆慰霊碑前では、広島県原水協や広島県被団協(金子一士理事長)などの約50人が正午すぎから約30分間、抗議の座り込みをした。県原水協の高橋信雄代表理事は「核兵器のない世界を唱えたオバマ大統領のプラハ演説と矛盾する。直ちに実験をやめるよう求める」と語気を強めた。

 県原水協などは、臨界前核実験を「今年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書の精神から逸脱する」とする抗議文を在日米大使館に送った。

 もう一つの広島県被団協(坪井直理事長)と連合広島も14日に座り込みをすることを決めた。

 原爆資料館東館の1階ロビーで、直近の核実験からの日数を表示している「地球平和監視時計」。13日は前田耕一郎館長が午後3時に「28」にリセットした。昨年5月25日に北朝鮮が地下核実験を実施して以来となる。

 前田館長は「米国が核兵器を持ち続ける意思を示していることに、裏切られた気持ちだ」と語った。


秋葉市長「激しい憤り」 広島県内の首長 相次いで抗議文


■記者 教蓮孝匡

 米国が実施した臨界前核実験に対し、広島県内の首長は13日、オバマ大統領たちにあてた抗議文を送った。広島市の秋葉忠利市長は、オバマ大統領の核兵器廃絶への努力に「多数派の市民」が期待を寄せていたことを挙げ「激しい憤りを覚える。被爆地ヒロシマを代表して厳重に抗議する」と批判した。

 秋葉市長はその上で「報復より和解を選んだ被爆者の体験や願いを共有してほしい」とあらためて被爆地訪問を強く求めた。

 抗議文ではこのほか、広島県の湯崎英彦知事が「核兵器のない世界に向けての流れに自ら水を差す行為」と断じ、廿日市市の真野勝弘市長は「暴挙であり許されない」と主張した。呉市の小村和年市長は、オバマ大統領がノーベル平和賞受賞の意義をいま一度考える必要性を強調した。

 福山市の羽田皓市長は、核兵器廃絶への国際的な大きな流れに言及し「世界平和の実現を求める人々の願いを無視した暴挙」と非難。尾道市の平谷祐宏市長は「今後一切の核実験の中止を」、三原市の五藤康之市長は「核保有国の責務として核廃絶への積極的な取り組みを強く求める」とした。


「米への抗議 考えず」官房長官


■記者 岡田浩平

 米国がオバマ政権下で初となる臨界前核実験を9月に実施したことについて、仙谷由人官房長官は13日の定例会見で日本政府として抗議する考えがないことを明言した。

 午後の会見で仙谷氏は、臨界前核実験に関し「米国の貯蔵する核兵器の信頼性、安全性を確保するためで、包括的核実験禁止条約(CTBT)で禁止される核爆発は伴わない」との認識を示し、「(米政府への)抗議や申し入れは考えていない」と述べた。

 オバマ氏が掲げ日本政府も支持する「核兵器のない世界」を目指す方針と矛盾するのでは、との質問には「そのように考えていない」と応じた。

 一方、菅直人首相は官邸で記者団に対し「核のない世界になり、未臨界(臨界前)を含めた実験の必要がなくなるよう努力しなければならない」と話した。

(2010年10月14日朝刊掲載)

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