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悲劇の語り部を後輩が担う 学徒動員321人被爆死の旧制広島二中 後身の観音高卒業生ら合唱や朗読

 学徒動員された1年生321人が原爆で全滅した旧制広島二中の悲劇を、後身の観音高(広島市西区)の卒業生たちが歌や朗読で伝え続けている。3日、卒業生の合唱団が在校生を前に、犠牲者を悼む「レクイエム碑(いしぶみ)」を熱唱。現役の放送部員も亡くなった生徒が書き残した日記を朗読した。世代を超え、平和への願いを紡いでいる。(田中美千子)

 中区の県民文化センターホールに、迫力の歌声が響いた。40~60歳代の男女54人による「観音高音楽部OB合唱団」。元顧問の益田遙さん(80)=西区=の指揮で、切なく、時に激しく歌い、1年生約240人を圧倒した。

 二中の卒業生が作詞作曲したレクイエムは被爆25年の1970年、地元の合唱団が初演した約45分の大作。原爆がさく裂し、業火が生徒を襲う「爆発」、母を呼びながら水にのまれる生徒の姿を描く「川の中で」など9章からなる。合唱団は結成翌年の2002年から毎夏、披露している。近年は、学校での平和学習の機会が減る中、1年生に聴いてもらうようになった。

 この日は初演でタクトを振った山本定男さん(83)=東区=も駆け付けた。原爆投下時は2年生で、東練兵場(現東区)で被爆した。「多くの死を無駄にしてはいけない。平和の大切さを感じて」と在校生たちに呼び掛けた。益田さんも「戦争を知る人は減るが、歌を通して原爆の怖さを想像してほしい」。生徒を代表し、後藤浩甫君(16)は「心に響いた。学校生活を送れなかった先輩たちを忘れない」と応じた。

 一方、放送部員3人は同日夕、中区であったひろしま音読の会の公演に出演。レクイエムの歌詞の基にもなった広島テレビ編さんの記録集「いしぶみ」から、生徒の日記を初めて読み上げた。

 2年藤間夏海さん(17)は「12、13歳の生徒が精いっぱい生きた姿を伝えたかった」。情感あふれる朗読で、慰霊と継承の気持ちを表した。

(2014年8月4日朝刊掲載)

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