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カウラの悲劇忘れぬ 事件70年 広島で慰霊祭

 太平洋戦争中の1944年にオーストラリア東部・カウラの日本兵捕虜収容所で起きた集団脱走暴動「カウラ事件」から70年を迎えた5日、広島市東区の饒津(にぎつ)神社で豪州カウラ会(戦友会)の慰霊祭が営まれ、遺族ら約20人が参列した。

 この事件は日本兵約900人が包丁などを武器に脱走を図り、231人が銃撃や自殺などで死亡、オーストラリア兵も4人殉職した。陸相東条英機が通達した「戦陣訓」の「生きて虜囚の辱めを受けず」をたたき込まれた結果起きた悲劇とされ、オーストラリアでは教科書に記述されている。

 遺族代表の浅田慶子さん(63)が「カウラの丘に眠る英霊の皆さんが、世界の平和と祖国の繁栄をお守りくださるよう祈念します」と哀悼の意を表明。2001年と翌年に生存者たちへの聞き取りをした広島経済大岡本貞雄ゼミの学生らが、証言集の改訂版を供えた。

 式典はカウラでも同日営まれ、鳥取市の村上輝夫さん(93)が元捕虜としては、ただ一人参列して日本人墓地に献花。やはり元捕虜で国立ハンセン病療養所邑久光明園(瀬戸内市)に暮らす立花誠一郎さん(93)は、慰霊の短歌を、現地を訪れた山陽女子高(岡山市)の生徒らを通じて届けた。(佐田尾信作)

(2014年8月6日朝刊掲載)

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