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被爆れんが 平和の使者 3月取り壊した広島市南区の倉庫外壁 修学旅行の学校に贈る

 広島市南区で、市道を広げるため3月に取り壊された被爆建物「三戸商店倉庫」の外壁のれんがを、市民団体の原爆遺跡保存運動懇談会が9月から、修学旅行で訪れた学校に贈る。「平和の重みを感じてもらいたい」との願いから。あの日を知る建物は、姿を変えて惨禍を伝え続ける。(菊本孟)

 れんがは縦11センチ、横23センチ、厚さ6センチほど。割れて小さくなったものも含め約200個ある。倉庫を所有していた石油販売業、三戸偉价(ひでとも)さん(76)=南区=から保存懇が譲り受けた。修学旅行生たちに平和学習のガイドをしている県被団協(金子一士理事長)を通じ、希望する学校に説明文を添えて配る。

 倉庫は1913年、常磐グリース製造所の所長の蔵として建てられた。れんが造りの2階建て。原爆投下時は日本特殊グリースの倉庫。爆心地から約3キロに位置するが、市によると、れんがには原爆の目立った痕跡はなかった。ただ、被爆時の爆風で倉庫の屋根瓦は吹き飛び、けが人が多く出たという。

 解体を知った廿日市市の元小学校教諭、藤沢敏郎さん(64)から「原爆に耐えた建物をただなくしてしまってはもったいない」との相談を受け、保存懇が活用策を講じた。高橋信雄副座長(75)は「各校が平和学習に役立てて、翌年も広島に修学旅行に来るきっかけになれば」と期待する。

 三戸さんも「れんがを『証言者』にしてくれてありがたい。原爆の悲惨さや平和の大切さが若い人に伝わってほしい」と願っている。

(2014年8月6日朝刊掲載)

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