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大切な人 奪った戦争 ソロモン諸島でいとこ戦死 広島県世羅の坂本さん 命日前に訴え

 世羅町本郷の坂本弘さん(84)は、9歳年上で兄のように慕った、いとこの写真を保管している。いとこは72年前、1942年8月7日にソロモン諸島で戦死した。21歳だった。「大切な人を奪う戦争は二度とあってはならない」。毎年、広島原爆の日と、その翌日のいとこの命日がくると坂本さんは強く思う。

 いとこの坂本敏男さんは1921年5月生まれ。38年に志願して呉海兵団に入団した。航空兵になり、博多や佐世保の航空隊などを経て41年、横浜航空隊に入った。親族に戦死が通知されたのは44年7月。既に死んで約2年がたっていた。遺骨はなく、戦死時の詳しい状況も分からない。

 坂本さんは世羅町の自宅で敏男さんと一緒に暮らした時期もあった。敏男さんからは、戦死する1カ月余り前の42年6月まで、毎月数通、近況などを知らせる手紙が自宅に届いていた。写真は同月に戦闘機整備のため一時的に横浜に戻った際に撮影され、自宅に送られてきた。手紙も保管している。

 「戦地からの手紙で、自宅にあった玩具の映写機の使い方を教えてくれた。優しい人だった」と坂本さん。「同じような悲しい思いをした人が大勢いることを、若い人に知ってもらいたい。繰り返してはいけない」と訴える。(与倉康広)

(2014年8月6日朝刊掲載)

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