×

ニュース

『源流』 2世会員800人超 継承へ広がる輪 三次市原爆被害者協

■記者 桜井邦彦

 三次市原爆被害者協議会の2世会員が800人を超えた。市町村合併前の旧自治体単位で、2世の会設立も進んでいる。核兵器廃絶運動と被爆体験の継承を願う被爆者たちが、子ども世代の名簿集めに奔走し、輪を広げた。高齢化に伴う継承への被爆者の不安が背景にある。

 吉舎町では24日、約140人が名を連ねて2世の会が発足する。約3年かけて結成の意義などを浸透させ、設立にこぎ着けた。

「時間がない」

 2世の背中を押したのは、9月に83歳で亡くなった町原爆被害者の会前会長の久保井和雄さんだ。

 「私たち被爆者には時間がない。2世の独立した組織を作り、互いの健康管理をしてほしい。核兵器がなくなるよう頑張ってもほしい」。生前の8月29日、町内であった設立準備会の後、久保井さんは取材に対し熱い思いを語った。

 他町でも、久保井さんのように継承を願う被爆者が、2世の名簿を集めるなど、組織化への原動力となった。

 市原爆被害者協は三次市が市町村合併した2004年、旧町村の会を中心に旧市内の被爆者も勧誘して発足した。当時、2世会員は約290人だった。その後、旧町村部にゆかりのある人たちを中心に幅広く呼び掛け、名簿上の会員は今夏で824人になった。被爆者会員(約600人)を昨年上回った。

 旧自治体単位の2世の会は三良坂、三和、甲奴、布野、君田にある。今月末発足予定の吉舎に続き、作木でも準備が進む。

 被爆者会員の平均年齢は83歳になる。継承は急務になっている。

意識に違いも

 2世会員は、市原爆被害者協の会報「百日紅(さるすべり)」への投稿や配布の手伝い、地域内の連絡調整、8月6日の広島の平和記念式典参列など、担う役割が日増しに大きくなっている。

 一方、名簿に名を連ねた会員の中には、何をしていけばいいか、自分たちに何ができるか、戸惑う人も多い。会員間に意識のギャップがあるのも事実だ。

 市原爆被害者協は被爆体験の寄稿を載せた会報の配布や、被爆2世対象の健康診断の周知などを通じ、意識啓発を進める。

 市原爆被害者協事務局長で2世の田口正行さん(53)は「原爆を二度「と使わせてはいけない。健康管理の意識を高め合い、2世を結集して平和運動の継承を図りたい」と力を込める。

(2010年10月20日朝刊掲載)

関連記事
三良坂 つなぐ8・6 <上> 百日紅 (09年8月 3日)

年別アーカイブ