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社説・コラム

美術散歩 原爆ドーム つなぐ記憶

◎大木茂展「希望を捜して」 10日まで。広島市西区古江新町8の19、ギャラリーカフェ月~yue~

 大木茂(1899~1979年)は昭和初期から広島洋画壇をリードした重鎮。東光会の初代広島支部長を務めた。しっかりと絵の具を乗せる堅実な筆運びは群を抜く。

 被爆者である大木が原爆ドームを描いた連作が、広島市西区のアトリエに残されていた。孫の平松敦子さん(54)が今春、自分や家族が作った工芸とともにこの会場に出展。それが縁になり、あらためて本展に結実した。復興する広島市街の風景画なども合わせ、18点が並ぶ。

 原爆ドームのシリーズは1960年ごろまでの作だ。英字の落書きがある壁の合間に青空や緑がのぞき、地には草花。希望も感じさせる。「瓦礫(がれき)A」=写真=は、ドームの足元に目を凝らしたのだろう。こちらには草花の影はなく、忘却にあらがうような筆致が胸に迫る。

 「なき花も求めて入れよ棺の中」。友人の画家が原爆症で亡くなる前に残したそんな句を、大木は53年の中国新聞への寄稿に書き留めている。(道面雅量)

(2014年8月7日朝刊掲載)

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