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ヒロシマとナガサキの声 世界に届けたい 市立広島商高 長崎商高生と絆 被爆地の鐘 響き合う 被爆69年

 「あの日」の記憶はない―。だが、ヒロシマの若者だから、被爆した母から命を授かった子だからこそ、二度と繰り返してはならない過去を語り継ぐ使命感がある。原爆の日の6日、広島市中区の平和記念公園一帯で、市民たちが平和を求める決意を発した。

 平和を願う被爆地の鐘の音が初めて共鳴した。平和記念式典で原爆投下時刻を告げる「平和の鐘」が鳴ってから約1時間後、会場近くであった市立広島商高の慰霊祭でも生徒が複製の「平和の鐘」を打ち鳴らした。長崎市立長崎商高の生徒も駆け付け「長崎の鐘」を響かせた。両校の生徒たちは「ヒロシマ・ナガサキから核兵器廃絶の声を世界に発信する」と宣言した。

 2年前に長崎商高が広島商高に「絆の証しに」と贈ったのが「長崎の鐘」の複製(直径17センチ、高さ18センチ)。広島の「平和の鐘」の複製(直径17センチ、高さ30センチ)は今春卒業生から贈られた。ともに実物よりは小ぶり。鐘を鳴らした広島商高3年石橋茉依さん(17)は「重みがあった。平和を誓う鐘の音が、犠牲となった先輩たちにも届いてほしい」。長崎商高3年里穂花さん(18)は「原爆の恐ろしさを伝えたい気持ちを込めた」と見つめた。

 両校の前身校はそれぞれ被爆し、校舎は全焼。広島商高は当時の生徒と教職員約250人、長崎商高は約170人が犠牲になった。被爆を乗り越えた市立の商業高同士が2007年に交流を始め、09年から互いの慰霊祭に参列している。

 被爆当時、前身の広島市立造船工業学校1年で、元市立広島商高校長の中島克己さん(82)は「鐘の音から平和の尊さ、ありがたさを感じた」。広島商高3年で生徒会長の中森三穂子さん(17)は「もっと一緒に行動してヒロシマとナガサキの声を世界に届けたい」と絆を深める決意をした。(川手寿志)

(2014年8月7日朝刊掲載)

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