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他船乗員の被曝 裏付け 第五福竜丸被害のビキニ実験 広島大の星名誉教授ら 歯や血液 解析

 広島大の星正治名誉教授(放射線生物・物理学)の研究グループが、米国による1954年の太平洋ビキニ環礁での水爆実験をめぐり、被曝(ひばく)した第五福竜丸以外に、複数の日本船の乗組員が被曝していたとみられることを初めて科学的に裏付けた。7日、同大であった研究会で報告した。(馬場洋太)

 60年前の3~5月、水爆実験の周辺海域を通った高知、宮城の両県などのマグロ漁船や貨物船の元乗組員男性の協力を得て、抜けた歯や血液から放射線の痕跡を解析した。

 歯は、漁船2隻の計2人分を分析。このうち、1人の推定被曝線量は414ミリグレイで、その後の医療被曝などの影響を差し引いても、広島原爆に換算すると爆心地から1・6キロの距離で浴びた放射線量に相当することが分かった。また、漁船8隻と貨物船1隻の計19人の血液を採取し、リンパ球の染色体異常を調べたところ、比較対象とした同年代(70、80代)の男性9人と比べ平均で90ミリシーベルト多く被曝していたと推定できた。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は一般の人の年間被曝限度を1ミリシーベルトと勧告している。星名誉教授は「通常ではありえない値。サンプルは少ないが、二つの手法でいずれも高い線量が推定できたことから、相当な被曝があったと考えられる」と指摘する。

 ビキニ水爆実験では、多数の日本漁船で捕った魚の汚染や、放射性降下物(死の灰)を浴びるなどの被害があったとされるが、乗組員の被曝線量の実態は解明されていなかった。グループは今回、汚染された漁船に関する未公開だった外務省公文書の内容を確認。旧厚生省が第五福竜丸以外の漁船乗組員に健康調査をし、白血球の減少など被曝が疑われる事例が相次いでいたことを突き止めた。

 グループの一員で、被災船の追跡調査を続けてきた太平洋核被災支援センター(高知県宿毛市)の山下正寿事務局長は「被曝した船員は1万人に及ぶ可能性がある。国は対応窓口を設け、実態調査や健康診断を検討すべきだ」と求めている。

(2014年8月8日朝刊掲載)

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