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社説・コラム

『記者縦横』 島根の2世 継承に苦悩

■松江支局・川井直哉

 84・61歳―。島根県に在住する被爆者1318人(2014年3月末時点)の平均年齢だ。高齢化が進む県内では、被爆者の全国平均79・44歳を5歳以上上回る。昨年1年間だけで87人が亡くなった。

 7月、島根県被爆二世の会会長を務める松江市の松浦広昭さん(65)に会った。高齢化する被爆者の現状に、「親世代の被爆者の思いや運動を被爆2世として急いで継承する必要がある」と語る松浦さんの言葉に重みを感じた。

 同会は08年に設立され、会員数は現在100人。今月6日に取材した松江市内の原爆慰霊碑前であった慰霊式では、参加者14人のうち、同会会員が8人を占めた。高齢で体が思うように動かない被爆者に代わろうとする2世の行動に、少し安心感を覚えた。

 そのことを松浦さんに伝えると、「差別を心配する被爆2世もおり、活動をどこまで広げられるか心配だ」と、思いがけない言葉が返ってきた。

 会員数は増えているものの、「被爆2世と妻に知られたくない」「年頃の娘がいる」などと、入会を断られることが多く、活動の広がりは限られているという。

「被爆者が数多く住む広島とは世間の目が違う。原爆は69年が過ぎた今も、被爆者だけでなく、その子どもも苦しめている」と胸を痛めていた。

 国内では、福島第1原発事故による被曝(ひばく)者も生まれた。被爆地の新聞として、伝えるべき事柄はまだまだ尽きないと感じている。

(2014年8月8日朝刊掲載)

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