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米大統領 被爆地訪問せず ヒロシマ 落胆と憤り

■記者 金崎由美

 オバマ大統領が11月の訪日時に、広島と長崎の被爆地を訪問しないことを米政府が発表し、その一報を受けた広島では29日、落胆や今後への希望などさまざまな思いが交錯した。政権後初となる9月の臨界前核実験に憤り、訪問自体を望まない被爆者もいた。

 広島市の秋葉忠利市長は記者会見で「非常に残念だが、今回が唯一の機会ではない。できるだけ早く広島と長崎を訪れ、被爆者の願いを共有してほしい」と訴えた。

 大統領は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため来日する。秋葉市長や広島県の湯崎英彦知事たちは、同時期に広島市であるノーベル平和賞受賞者世界サミットの出席を求める書簡を送っていた。

 「被爆地で核兵器廃絶への決意をもう一度強めてほしい、という訴えは続けたい」。核兵器保有国首脳を広島に呼ぶ活動をしている「中高生ノーニュークネットワーク広島」メンバーの広島学院高2年馬上拓也さん(17)はあらためて誓った。

 被爆地で高まりつつあった訪問への期待。ただ、臨界前核実験が判明し、被爆者に複雑な反応が生じていた。

 オバマ大統領に広島訪問を求める手紙を4回送った元原爆資料館長の高橋昭博さん(79)は「実験をするべきでなかったという表明がない限り、来なくても結構だ」と突き放す。

 一方、臨界前核実験に踏み切った大統領に対し、広島県被団協の坪井直理事長(85)は「だからこそ被爆体験証言を聞いて原爆被害を学んでほしかった」。もう一つの県被団協の大越和郎事務局長(70)は「訪問自体は意義あるだけに残念だ。米国内の保守派への配慮だろう」と話した。

(2010年10月30日朝刊掲載)

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