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大会総括 両者の路線 違い鮮明に

来年見据え 歩み寄りを

 来年迎える被爆70年と核拡散防止条約(NPT)再検討会議。今夏の日本原水協などと、原水禁国民会議などの二つの原水爆禁止世界大会は、1年後に迫る節目と正念場を見据え、核兵器をなくすための具体的な議論に熱が入った。ただ、それぞれが焦点にしたのは「核兵器禁止条約」と「脱原発」。両者の路線の違いは、一層鮮明になった。

 原水協などの世界大会は、5年に1度のNPT再検討会議に届ける核兵器禁止条約の交渉開始を求める署名集めと連動。フォーラムや分科会でも条約に関する討議を前面に押し出し、18カ国の海外代表も交えて活発に話し合った。3年前から集める署名が約410万人分に達したこともアピールした。

 原水禁などは、2011年の福島第1原発事故を機に一段と力を入れる「脱原発」の主張を深化させた。日本の国策である核燃料サイクルによるプルトニウムの大量保有が周辺国への脅威や核拡散の懸念につながっていると指摘。唯一の戦争被爆国の覚悟を国際会議や分科会で問うた。

 いずれも核兵器のない世界に近づけるために欠かせない論点だろう。であれば、補完し合い、相乗効果を生み出す可能性を模索すべきなのに、両者は互いにそっぽを向き、意思疎通を図ろうとはしない。

 1954年のビキニ水爆実験を機にした原水爆禁止の署名運動を引き継ぎ、翌55年に始まった世界大会は、ことし60回目の記念的な大会だった。源流をくむ原水協は歴史に一切触れようとしなかった。10年後に分裂した原水禁は、来年を結成50年として盛り上げようとしている。

 双方の幹部は「道のりは違っても、向かう場所は同じ」と口をそろえる。しかし、核兵器のない世界という遠い頂を目指すとき、エネルギーが分散したままで強い潮流となれるだろうか。節目であり、正念場である来年を見据え、少しずつでも歩み寄りの糸口を見いだす努力を始めるべきではないか。よわいを重ねる被爆者の希望の光であってほしい。(藤村潤平)

(2014年8月10日朝刊掲載)

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