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朗読劇で再び問う「ゲン」 23日に松江の市民劇団 「表現封じる社会に一石」

 市民劇団「劇団幻影舞台」(松江市)が23日、漫画「はだしのゲン」の朗読劇を市内で公演する。一部の過激な描写を理由にした同市教委による「ゲン」の閲覧制限が発覚して16日で1年。「メッセージ性の強い表現を大人の独断で封じる社会に一石を投じたい」と稽古に励んでいる。(樋口浩二)

 約50分間の劇は、広島市に原爆が投下されるまでを描く。「麦のように強うなれよ」。主人公の元(ゲン)に語り掛ける父大吉。厳しくも温かい父を慕う元や姉英子。主宰者で松江市の清原真さん(65)は「家族愛あふれる作品。色あせない魅力を感じてほしい」と話す。

 清原さんは閲覧制限が発覚した昨年8月「ゲン」を劇にすると決めた。「過激なシーンもあるが、それも戦争の悲惨さ。子どもが考える機会を奪った閲覧制限はおかしい」。同10月、同市で初公演を挙行。観客250人から「情景が目に浮かんだ」「引き込まれた」などと評価する声が相次ぎ、発覚1年の節目に再演する。

 20~70代の団員15人から主役に選ばれたのは安来市のアルバイト日向純平さん(21)。当初は「元のたくましさが表現できるか不安だった」。だが「もっと想像力を働かせろ」。週2回、午後7時半~11時の稽古で清原さんの厳しい指導を受ける中で「元に近づけた気がする」と手応えを感じ始めた。

 23日は松江市新町の洞光寺で午後8時開演。9月27日には、浜田市金城町でも公演する。被爆70年の来夏には、広島市で公演する目標も掲げる。「被爆者にも戦争を知らない人にも『ゲン』のメッセージを伝えたい」と清原さん。Tel090(7503)4689。

はだしのゲン閲覧制限
 広島市中区出身で2012年12月に亡くなった漫画家中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」をめぐり、松江市教委が同月と13年1月の2度、書庫に収める閉架とするよう市内の全49小中学校に要請。同年8月16日に発覚し、同26日に要請を撤回した。

(2014年8月13日朝刊掲載)

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